最終年度であるH31年度の主な成果は,連鎖パタンマイニングとディープラーニングの組合せにより,心疾患を高精度に識別することに成功したことである.この方法は,1)連鎖パタンマイニングによる異常波形の検出と画像化,2)正常なビート波形の画像化,3)2D-CNNによる学習,4)識別,の4ステップからなる.ステップ1では,心疾患の複数誘導の心電図データを対象として,連鎖パタンマイニングを用いて複数誘導に跨って出現する周期的かつ規則的な心拍波形を検出し,これをマスキングした.これにより,非周期的かつ不規則な異常波形のみが残るため,これらを一定区間ごとに切り出して画像化した.ステップ2では,健常者の心電図データから正常なビート波形を切り出して画像化した.ステップ3では,ディープラーニング手法の1つである2D-CNNを使用して,ステップ1と2で得られた心疾患クラスと健常者クラスの画像の識別モデルを構築した.ステップ4では,テスト用の心電図データを用いた識別実験を実施し,既存研究の結果との識別精度の比較を行った.本研究では,性能評価実験として,健常者クラスと,不整脈の1つである心室期外収縮の識別テストを行った.その結果,99.9%のAccuracy,99.7%のSensitivity,99.9%のSpecificityを達成し,既存研究の精度を大きく上回ることがわかった. 3年間の研究期間をとおして,既存法よりも高精度かつ高速な連鎖パタンマイニングアルゴリズムを開発でき,また,心電図の異常波形を検出する方法として有効なアプローチであることが示された.さらに,連鎖パタンマイニングとディープラーニング手法を組み合わせることで既存研究を大きく上回る心疾患識別が可能となることが示された.以上の成果は,2件の査読付英語論文誌,3件の査読付の国際会議論文誌,7件の国内学会で発表された.
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