研究課題/領域番号 |
17K00378
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
金井 博幸 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (60362109)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 運動効果促進ウェア / 低伸縮性テープ状編物の積層設計 / 筋電図計測 / RMS解析 / トレッドミル歩行 |
研究実績の概要 |
我々は生活習慣病の誘因となる肥満症の予防・改善に資すると期待される「運動効果を促進するウェア」の開発に取り組んできた。真に実効性を担保するには、着用者が継続してウェアを着用することが必要であるため、提案ウェアの快適性の向上が必須である。 平成29年度は、汎用的な肌着がもつ熱と水分の移動性能を運動効果促進ウェアに実装させることに取り組んだ。すなわち、綿紡績糸編物をベース生地とし、当該研究課題の前段階となる平成25年-27年の課題において提案した複数の低伸縮性テープ状編物を積層して新規運動効果促進ウェアを提案した。これによって従前のウェアと比較して温熱快適性の改善を達成できたといえる。 しかし、本課題で目指す「実効性を備えた運動効果促進ウェアの提案」には温熱快適性の改善のみならず動作適応性(動きやすさ)の改善が必要と考えている。本課題の前段階で提案したウェアは「動きにくく不快である」と評価されており、その主要因は運動効果を促進する低伸縮性テープ状編物の積層パターンにあると考えている。そこで平成30年度は、低伸縮性テープ状編物の積層パターンを大幅に見直すことで、運動促進効果を保持しながら動作適応性の飛躍的な改善に取り組んだ。 実験では、低伸縮性テープ状編物を積層する範囲を大幅に(1/6程度に)減少させた全5種類のウェアを試作し、これらを着用してトレッドミル上を4km/hの速度で歩行したときの筋電図を測定した。その結果、低伸縮性テープ状編物の積層パターンが異なることで下肢の筋活動が異なることを観測した。すなわち積層パターンによって賦活する筋肉部位と筋の活動量が全く異なった。そして、運動促進効果が顕著な2種類の積層パターン、すなわち「前面縦方向」と「後面縦方向」を採用すれば、「運動効果を保持しながら動作適応性を向上させ得るウェア」をとなることを示唆する積層パターンを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画において、平成29年度は、主に温熱快適性を改善するためのベース用生地の試作、平成30年度は、主に動作適応性を改善する低伸縮性テープ状編物の積層パターンの見直しを行い、これらの効果を随時検証することで研究を進めていく計画であった。 現在までにこれら2点の改善に関して具体的な提案を終えており、その効果についても併せて検証してきている。ただし、当初計画では平成30年度末までに、ウェアの仕様を完全に確定させ、平成31年度には、最終的な試作ウェアの検証実験を行う予定であった。しかし、上述のとおり、低伸縮テープ状編物の積層パターンの検討に関しては、2つの効果的なパターンを特定したところで終了していることから、2つのパターンを組み合わせた最終仕様のウェアについて検証に至っていない。このことから、2つのパターンを組み合わせた最終仕様のウェアについて、現時点では想定できない何らかの作用によって最終仕様ウェアに期待した効果が得られない可能性を否定できない。 しかしながら、既に協力企業に最終仕様ウェアの試作を依頼済みで、現在試作が進行している段階である。また、試作が完了すれば、すぐに最終的な検証が開始できる状況となっていることから、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
以上を踏まえて、平成31年度は最終仕様の運動効果促進ウェアについて、効果検証を実施する計画である。具体的には、当初平成30年度の計画に含まれていた筋電図の測定を優先して実施し、試作したウェアによる筋肉の賦活効果を確認する。 加えて試作ウェアを着用してトレッドミル上を4km/hの速度で歩行したときのエネルギー消費量を測定して運動効果を促進する機能性の評価を行い、最終的に実効性が期待できる運動効果促進ウェアとして提案する計画である。 合わせて、本研究課題に対する取り組みの成果を社会に発信するための活動に注力する計画である。
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