我々は、これまでに生活習慣病の誘因となる肥満症の予防・改善に資すると期待される「運動効果を促進するウェア」の開発に取り組んできた。真に実効性を担保するには着用者が継続してウェアを着用することが重要であるため、提案ウェアの快適性向上に取り組む必要がある。 この運動効果を促進するウェアは、大別してベース用編物と低伸縮性テープ状編物で構成される。1年目(平成29年度)は、ベース用編物の温熱快適性の向上を目的として、熱と水分の移動性能を改善(熱伝導性の増加、透湿抵抗の低下)した2種類の編物を試作した。2年目(平成30年度)は、動作適応性の改善を目的として、低伸縮性テープ状編物の使用面積を1/6程度に低減した新たな5種類のパターンを試作し、これらを着用した時の筋活動動態を計測した。 3年目(令和元年度)は、2年目に試作した5種類のウェアを着用し、時速4kmで歩行した時の酸素摂取量を計測してウェアのもつ運動促進効果を評価した。そしてこの結果に基づいて効果的な積層パターンを選定した。さらに、熱と水分の移動特性に改善がみられたベース用編物2種類、すなわち、綿とポリエステルの混紡糸にポリウレタン糸を引きそろえ、天竺組織およびフライス組織で編成した編物と選定した低伸縮性テープ状編物の積層パターン、すなわち、「前面縦方向の衣服変形を抑制するように積層するパターン」を組み合わせたウェアを「運動効果を促進するウェアの改良版」として試作した。試作ウェアの運動促進効果を評価した結果、ベース用編物に天竺編布、およびフライス編布を採用したウェアは、従来のトリコット編布を採用したウェアに比べて、酸素摂取量がそれぞれ3.7%、および4.3%増大することを確認した。本研究で得られた成果から、温熱快適性に関わる物理的性能と運動促進効果を両立するためのキー要素を特定し、その仕様を提案できた。
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