研究課題/領域番号 |
17K00386
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
石津 智大 関西大学, 文学部, 准教授 (50726669)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 美的判断 / 身体醜形恐怖 |
研究実績の概要 |
自身の容姿のわずかな瑕疵に強迫的にとらわれる「身体醜形恐怖懸念」(以下、醜形恐怖)は、その一因として審美的な判断の仕組みに異常があると考えられる疾患である。この醜形懸念を取り上げ、審美的判断に関する脳機能研究(神経美学)のこれまでの成果を利用して、その認知機構、脳内機構の解明を試みることが本研究課題の目的である。本研究の被験者は、BDD (Body Dysmorphic Disorder)-Syndrome Scaleという尺度により醜形恐怖懸念傾向があると認められた健常成人である。 これまでにウィーン大学・ロンドン大学と共同で行った研究では、醜形恐怖が身体像に限局された審美判断の問題であるか行動実験により検討した。その結果、醜形恐怖傾向高群では、自己身体像条件において標準スコアより低い美醜評価が得られた。一方、他者身体像条件と風景条件(非身体像)とてでは 標準スコアと同程度であった。身体醜形恐怖が身体認知に限局した現象であること確認し、実験手法を確立した。また、同じ実験刺激(自己身体像、他者身体像、 非身体像)を用いて、審美的判断と知覚的判断(非審美的判断;体勢の判断)を比較し、醜形恐怖が美醜とは無関係の知覚的判断においても影響を与えているのか検討した。その結果、醜形恐怖傾向の低・中の被験者群では、対照群との有意な差はみとめられなかったが、醜形恐怖傾向の高い被験者群では異なる傾向がみられた。現在は、身体像を含む刺激に対する個人の美的判断が、他者の意見によってどのように影響を受け、変化するかを検討している。一部の結果は、2021年にJournal PsyChにて発表した。引き続き、フィルタリングした自己顔などを用いての行動実験と脳機能測定を組み合わせ、関係している脳活動について調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Covid-19の影響による国内外の研究機関の閉鎖のため。 本研究課題は、オーストリアのウィーン大学および英国のロンドン大学で共同実験を行っていたが、Covid-19の世界的な流行により、昨年から引き続いて欧州全体の研究施設で対面実験の制限をしており、それに伴い実験が中断しているため。また日本国内でも感染が続いており、行動実験・脳波計測実験ともに対面での実験が制限されているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、現在までに取得できている機能的MRIデータの解析を進める。具体的には、美的判断に関係する脳領域の活動変化とともに、情動処理に関係する領域、そして社会的・情動的情報の処理に関係する領域などの活動に注目する。領域間の機能的結合をネットワーク解析によって検討する。同時に、漸次的に対面での実験を再開し、行動実験、脳機能実験のデータ取得を速やかに行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の世界的な流行の影響で国内・国外の実験施設が閉鎖または使用制限され、実験が中断していたため未使用金が生じた。余剰金については、2021年に追加研究に必要な物品等の購入にあてる予定である。
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