本研究の目的は、「かわいい」感の国際間の共通性と差異の明確化である。我々はこれまでおもに日本人を対象に、視覚・触覚・聴覚のマルチモーダルな側面から、人工物の物理属性から生じる「かわいい」感を系統的に解析し、その結果から「かわいい」人工物の定量的構成法を導出した。本研究は、これまでの研究の 方法および成果に基づき、「かわいい」感の国際的多様性に焦点を当て、日本人以外の外国人の「かわいい」感のモデルを導出する。ここでは色や見た目の質感等の視覚的物理属性に対象を絞り、これまでの脳波や心拍等の生体信だけでなく視線追跡も用いる。 ここで令和元年度は、以下の3項目を計画し、実施した。 1.日本人および外国人を対象とした、「わくわく系」と「癒し系」の分類を考慮した「かわいい」感のモデルの検証実験:化粧品 のボトルの画像を対象として、日本人と中国人の「わくわく系かわいい」感のディープラーニングによるモデルを新たに構築予定であった。しかし、年度末の平成2年1月以降の中国国内の新型コロナウィルス流行の影響により、未完になってしまった。 2.日本人および外国人を対象とした、「わくわく系」と「癒し系」の分類を考慮した生体信号計測や視線追跡等による「かわいい」感のモデルの構築:「わくわく系」と「癒し系」の両方の要素を含む動画像を用いて実験を行い、「わくわく系かわいい」感と「癒し系かわいい」感と心拍の関係に関する新しい知見を得た。さらに、これらの「かわいい」感に対し、心拍から算出した生理指標を説明変数とする重回帰モデルを構築した。 3.「原宿系かわいい」ファッションの特徴抽出とその国際比較:「原宿系かわいい」ファッションは、他のファッションと比較して大きな特異性を有すると考えられる。その特徴を、画像特徴量を用いて定量化すると共に、原宿や渋谷のストリートファッションやタイのファッションと比較した。
|