研究課題/領域番号 |
17K00389
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
根本 幾 東京電機大学, システムデザイン工学部, 研究員 (40105672)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 和音 / 周波数比 / 周期比 / 協和度 / 一般音階理論 |
研究実績の概要 |
今年度も新型コロナによる自粛生活のため,実験的な研究は行えなかったが,第一の目標としていた今までの研究成果の論文発表にこぎつけた.まずその概要について述べる. 和声は特に西洋音楽において本質的な役割を担ってきており,その協和・不協和の対比や情動連続体は現在でも精神物理学および神経生理学上の目標であり続けている.本研究では各和音の構成音の周波数比の単純度Sfと周期比の単純度Spを定義し,それらを平面の2直交軸として,三和音および七の和音を平面上の1点として配置する方法を提案した.この平面上で長三和音と短三和音は対称な位置にある.七の和音で対称な位置にあるのは属七と半減七のペアである.他の三和音および七の和音は異なる(長・短のような)和音で対称なペアを作らない.これらの対称なペアは音楽的にも重要な対比を作るペアである.さらに,少なくとも三和音については,Sp+Sfが主観的な協和度のデータとよい一致を見せ,またSp-Sfが主観的な憂愁/悲嘆のデータとよく一致することがわかった.提案された簡単な和音の表現が,さらに音響心理学的,神経生理学的結果の解釈に役立つと期待される. 以上が論文の内容であるが,今年度はここ20年の間に発達した音階理論を研究した.これは西洋音楽で発達した12平均率の中での全音階や五音音階の性質を極めてよく説明するだけでなく,アラブ,中国などの非常に音数の多い音階の説明もできる,非常に一般的な理論である.今の段階ではまだはっきりしないが,上に述べたSf, Spなどと結びつけられるかも知れないと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
論文受理に至ったことは大きな一歩であったが,実験的な研究ができなかったことが研究の停滞をもたらした.その代替として,今までとは異なる観点から和音を見直す方法を模索している.その方法としてここ20年ほどの音階の理論的研究に目を向け,その勉強をしているが,自分にとって未知の分野であり,基本的事項の学習に手間取っている.
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今後の研究の推進方策 |
今後もしばらくは実験的研究が困難だと思われるので,新しい音階理論の研究に進みたい.その分野は新しく,様々な訳語も定着していないほどだと思われる.いわゆる通常の全音階(ドレミファソラシ)は,well-formed 音階 (WFS),さらにはmaximally even 音階(MES)の集合に含まれ,それらの性質が全音階や五音音階の特別な性質を形成している.このような抽象的,一般的な音階を詳しく調べることにより,新しい音楽の誕生の可能性すら論じられている.このようなことを念頭に置いて,現在まで申請者が研究・提案した和声の新しい表現法との関連性を明らかにしたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は新型コロナによる自粛生活のため実験的研究ができなった.今年度は新しい文献の入手に約20万円,学会発表などのために約25万円,その他雑費に約20万円ほど使用したい.
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