本年度は実験的な研究は全く行えなかったので,補助金の繰越金は書籍数冊の購入以外,ほとんどを返却した. 本来は,2年前に発表した論文の内容,つまり和音の2次元的なマッピングと感覚との対応を研究するための実験を進める予定であったが,実験的研究が出来ない状態が続いた.その代わりとして,音楽理論の数学的な解釈の面をすすめるため,理論的研究として音階やリズムの数学的理論の研究に携わったが,研究のレベルにはまだ到達せず,専ら数学的な基礎の獲得に努めているところである.数学的基礎としては2次体の整数論や代数的整数論の理解を中心としている.その音楽理論への適用法についてはまだ必ずしも明らかではないが,音階におけるmaximally even setの概念や,リズムのflatnessの概念は整数論的な概念で,これらを拡大することによって,音階やリズムに対する嗜好性との関連を明らかにできると考えている. 以前行った,曖昧な旋律に対する脳磁界の反応の研究では,統計的な有意差が出るような統計量を工夫したが,本研究における和音のマッピングとその感覚との対応の研究において,それが応用できると思われる.あるパラメータほ固定し他のパラメータを動かすというような操作が必要な本研究においては,統計量の取り方が結果を大きく左右するが,同様な操作を以前にも行っており,それが有用であると思われる.ただし,ここ数年,実験的研究が出来なかったので,実現はできていない.
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