研究課題/領域番号 |
17K00393
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
上田 悦子 大阪工業大学, ロボティクス&デザイン工学部, 教授 (90379529)
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研究分担者 |
小枝 正直 大阪電気通信大学, 総合情報学部, 准教授 (10411232)
竹村 憲太郎 東海大学, 情報理工学部, 准教授 (30435440)
中村 恭之 和歌山大学, システム工学部, 教授 (50291969)
飯田 賢一 奈良工業高等専門学校, 電子制御工学科, 教授 (70290773)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 優美な動作 / モーションキャプチャ / ガウス写像 / 舞踊動作 |
研究実績の概要 |
本研究テーマでは,人間特有の「優美な」と形容される動作に着目し,過去から議論されてきた優美さ特徴の定性的表現を人間の動作計測と解析により定量化し,モデル化することで優美なロボット動作の実現を目指している.「優美さ」は身体上に表れる線や面の時間的変化で表現されると考えられる.このことから優美な動作の代表例である「舞踊動作」をもとにして,身体が作る「線」や「面」の時間的な形状変化に着目して「優美さ」特徴のモデル化手法を提案し,印象評価結果と比較することで手法を検証していく. 初年度は,舞踊動作中の前腕と上腕が作る曲面形状の解析方法の検討を進めてきた.曲面形状解析は,微分幾何の一つであるガウス写像を用いたアプローチから取り組んだ.ガウス写像は,任意の曲面を微小な空間平面の集合として分割すれば,個々の平面の単位法線ベクトルを単位球上に写像することで実装した.これにより腕が作る任意の曲面を,単位球上での点の分布として表現できる.写像により,実空間での腕が作る曲面をシンプルに扱うことができると考え取り組んでいる. 保有している複数の舞踊動作の手先・肘・肩の位置データを1000フレームごとに切り出し,それぞれについて腕により構成される曲面のガウス写像を計算し,特徴抽出する方法を検討した.その結果滑らかに動いている部分では,写像空間での点の分布が特徴的な傾向を持つことがわかった.この特徴的な傾向を定量化する手法をさらに検討し,印象評価結果との相関性も検証した.その結果,優美さ印象が比較的低い舞踊は写像間距離が長くなるといった「傾向」は得られたが, 印象評価との強い相関を得るためには,定量化手法の工夫が必要であることもわかった. このように初年度の成果としては,アイディアの実装と実データを用いた分析,アイディアの評価までを一通り行い,次年度解決すべき指針を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
舞踊動作中の前腕と上腕が作る曲面形状のガウス写像による表現の実装,写像空間における特徴定量化方法の提案,人間の印象評価との比較による提案手法検証と問題点の抽出まで進んでいる. 計画では初年度に,(1)舞踊動作時の腕が作る曲面解析,(2)舞踊動作のフォルムからのS字状曲線特徴抽出を行うとしていた.(1)に関しては報告の通り順調に進んでいる.(2)に関しては,我々が保有している舞踊動作動画データではないが,画像処理を行うのに適した環境下で取得したモデルの歩行動作フォルムからの特徴抽出プロトタイプの実装まではできている.このようにソフトウエア開発に関しては当初の計画通りに進んでいるという状況である.一方で,初年度に予定していた「解析用舞踊動作データの選定・収集」はできていない.この理由は,解析に適したデータを取得する必要があり,データ取得方法の十分な検討が不可欠であるため慎重に進めたほうが良いという判断をしたからである.そのため2年目以降アルゴリズムが固まってから慎重にデータ収集を行う予定である. 初年度の進捗は2017年12月開催の第18回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会(SI2017)@仙台にて発表を行った.
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今後の研究の推進方策 |
・両腕の動きのガウス写像を用いた解析では,印象評価との相関による検証から出てきた問題点の改善を進める. ・舞踊動作のフォルムからのS字状曲線特徴抽出では,初年度作成したプロトタイプを舞踊動作に適用する手法を検討する.これまで本研究では画像処理やコンピュータビジョン技術を用いたアプローチをとっていなかったが,今年度は積極的にこれらの技術を用いて,本申請の大きな柱の一つである「フォルムから」のアプローチを進める. ・今年度は,動作速度に着目した特徴解析に新しく取り組む.これまでは動作が作る形状だけに着目していたが,その形状をどのような速度で作っていくのかをフォルムの変形速度の観点から明らかにする手法を検討・提案していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
提案手法の問題点を現有のデータを用いて改善することを優先とし,申請時初年度に予定していた追加の古典舞踊データの取得を行わなかったため,謝金として計上していた部分がほとんど使用できなかった.次年度に手法の改善をスムーズに進め,新しい舞踊データの取得を行う予定である事から,謝金として使用する予定である.また,国際会議での発表も積極的に行っていく.
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