研究課題/領域番号 |
17K00397
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中井 謙太 東京大学, 医科学研究所, 教授 (60217643)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | Hi-Cデータ解析 / TAD構造 / A/Bコンパートメント / 特異的遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
初年度は、学生アルバイトのちからを借りて、関連文献情報などを収集するとともに、基礎的な研究として、異種細胞から得られたHi-Cデータに基づくクロマチン構造のち外の検出がどの程度可能かの検証に注力した。Hi-Cはいまだ発展途上の技術であり、そのデータ解析にはパラメータ設定などにも多くの自由度があり、特に異なる年度や異なる研究室から発表されたデータの比較はチャレンジングである。この点に関して、我々は、いわゆるTAD構造よりもA/Bコンパートメントと言われる構造の比較の方が、比較的信頼性が高いという結果を得た。そこで、ES細胞(Dixon et al, 2012)、B細胞(Lin et al. 2012)、白血病細胞(Rao et al., 2014)などの間で、A/Bコンパートメント境界が有意に変化している領域を検出し、その領域に含まれる遺伝子群と、それらの細胞間で発現量が有意に異なる遺伝子群との比較を行ったところ、(予備的な結果ながら)一部興味深い相関がみられた。また、GO解析によれば、細胞間により、コンパートメント所属が変わった遺伝子として、細胞分化やがん化に重要と思われる遺伝子群がピックアップされるようである。たとえば、B細胞でAコンパートメントで、白血病細胞でBコンパートメントに変わった領域には、アポトーシス関連遺伝子が多いという結果が得られた。単純に考えると、アポトーシス機能が抑えられたことによって、がん化しやすくなったと解釈したくなるが、研究をさらに進めていきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組織特異的エンハンサーの予測を行うためには、Hi-CデータとRNA-seqデータの比較が重要と考えられるが、上述のように、特にHi-Cデータに関しては、いまだ成熟した技術の産物とは言い難く、異なる文献で発表されたデータ(異なる実験条件などで得られたデータ)の比較は自明ではない。この点に関しては、ある程度は時間が解決してくれるのを待たなければならない面もあるだろうが、現状で何をどこまで比較できそうなのかを確認することが必要である。この点に関して、平成29年度の研究で、ある程度は見通しがついたと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度もある程度基盤的なデータ収集に努める必要があると考えている。特に、細胞特異的エンハンサーで既知のものに対して、Hi-Cなどから得られるクロマチン構造の変化とどの程度関連付けられそうかの検証は必要であろう。前年度から行っている、A/Bコンパートメントを始めとする構造の細胞毎の違いの特徴づけに関しても、より多くのデータやソフト、パラメータ設定に関して検討して、理解を深めていきたい。論文発表も積極的に行っていきたいと考えている。
|