研究実績の概要 |
第一に、D1/D2可塑性モデル論文が採択された(Urakubo et al. 2020, PLoS Comput Biol 16(7): e1008078)。第二に、同モデルの拡張的な研究を行った。D2可塑性モデルにおいて、DA の一過的な減少(DA dip)を検出して可塑性が生じる条件を検討すると、(1)D2RとRGS9という二種類の分子の発現量がバランスしている必要があること、(2)RGS9の発現量が一定レベル以上ある必要があることが明らかとなった。さらに、条件(1,2)を満たすパラメータを解析的に導出した。文献検索より、条件(1)は正常なマウスの発達においては達成されるものの、統合失調症においてはD2R優勢となってしまうこと、逆にDYT1遺伝性ジストニアにおいてはRGS9優勢となってしまうことが分かった。行動学習においては、DA の一過的な減少(DA dip)はRegretシグナルとして検出されて弁別学習が進む(Iino et al. 2020, Nature 579, pp. 555-560)。すなわち、弁別学習が行われることが正常な発達には不可欠であり、遺伝的な要因などでD2R-RGS9バランスが崩れてDA dipの検出が不可能になること、統合失調症やジストニア/ジスキネシアなどの精神疾患が引き起こされることが明らかとなった。 以上の結果をまとめて論文投稿をおこなったところ、査読者より(1)入力となるDA dipシグナルについて、より生理的な条件でモデル化すること、(2)モデルではD2R(RGS9)→ Gi→AC経路についてのみ検討を行っているが、Gsの効果をモデルに導入せよとのコメントを頂き、現在、モデルの改訂を行っている(Urakubo et al., PLoS Comput Biol, In revision)。
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