上皮組織中の細胞境界の形状は、細胞内部粘弾性の影響を受け、時空間スケールにより異なる振る舞いをもつことが知られている。一細胞レベルの形状に基づく組織力学モデルおよび力学情報理論の構築のためには、より詳細な実験的知見が必要となる。当該年度では、一細胞レベルの形状を含む上皮組織の4D顕微鏡データの定量化を進めた。具体的にはキイロショウジョウバエの蛹期翅上皮に関する実験条件の最適化を行い、画像処理プロトコル及び付随する各種プログラムを開発し、各種4Dデータについて定量化を行った。例えば細胞核4D画像データに関して、前年度に引き続き機械学習で認識する深層学習モデルおよびプログラムを開発した。また、前年度までに構築した上皮組織粘弾性に関する計算機実験プログラムを用い、これまでの先取的な結果を発展させてより広範な粘弾性応答領域での結果を得て、既存のモデルとの違いを示した。さらに昆虫翅形成ダイナミクスシミュレーションの実施を目指して、複数トンボ種の幼生や成虫を採取し、翅の採取や染色および翅脈パターン解析を行い、形態形成と発現する機能との考察をシミュレーションに向けての比較・検討を行った。これに関して国内会議で1件発表した。 尚、上記3トピックの内、前者2トピックに関しては、国際共同研究加速基金(課題番号17KK0007)による発展研究の内容も含んだものである。この成果については、査読付き論文集にて2編出版し、複数の国際会議および多数の国内会議にて発表した。さらに最終年度のアウトリーチ活動として、セミナー発表・講演、学会発表を精力的に行った。
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