動脈硬化症の初期段階では血管内皮機能が低下することが知られている。そうした内皮機能の非侵襲的な評価手法として、血流依存性血管拡張反応検査が普及しつつある。この反応は血流刺激に対し、内皮細胞が血管拡張物質となる一酸化窒素を産生し、続いて平滑筋細胞の生理学的作用により血管壁の機械的構造が変化することで引き起こされる。本研究では、こうした生体内での信号伝達や反応について、細胞レベルでの機械的刺激の受容機構、イオンチャネル機構、信号伝達機構などの特性を数理モデルとして記述した。血流刺激から血管径変化にいたるマルチスケールな反応のシミュレーションによって、血管内皮機能を詳細に解析できるようになった。
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