研究課題
本研究課題は、ミツバチのダンスコミュニケーションに使用されている空気の振動刺激を受容、処理する神経回路の構造およびその情報処理メカニズムを実際の生理、形態実験データに基づき解析を進めるものである。今年度は、ニューロンの形態モデルを標準的な脳座標系であるミツバチ標準脳にレジストレーションするための前段階として、既存の標準脳を発展させる形で、振動刺激処理に関係するDorsal Lobe, Subesophageal ganglia部分の詳細な構造を組み込んだ標準脳を構築した。さらに、これまでに得られたニューロンの形態と応答のデータベースから、対象となるニューロンを選別し、それらのデータにアクセス、利用するためのソフトウェア環境を整備した。一連の成果は、INCF Congress Neuroinformatics 2018、日本比較生理生化学会、Advances in Neuroinformatics 2018などにおいて発表した。一方、これまで進めて来た研究成果の発表に努め、国際ジャーナル BMC Bioinformatics, Front. Psychol., Front. Neuroinform.、国内関連雑誌 昆虫と自然において論文発表を行った。また、朝倉書店より出版された「昆虫の脳をつくる」において、本テーマの研究代表者を中心に標準脳およびニューロンの形態モデルの構築方法、標準脳へのレジストレーション方法を解説した。今年度の研究によって対象となるニューロンの形態抽出と標準脳へのレジストレーションが可能となり、最終年度にむけて回路解析への準備が整った。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度は、これまでの研究成果を論文として出版することに注力したが、標準脳の拡張を行うことができ、細胞モデルのレジストレーション、解析の準備を整えることができた。
振動刺激情報処理に関与するニューロンの形態モデルを標準的な脳座標系であるミツバチ標準脳にレジストレーションするための標準脳を構築することができたことにより、これまで構築したニューロン及びデータベースから選別したニューロンの形態を標準脳上にレジストレーションすることが可能となった。まだ形態モデルを構築していないニューロンについて形態モデルの構築を進め、これらについて標準脳へのレジストレーションを実施する。さらに、標準脳上での各ニューロンのコネクティビティから、仮想的なシナプス結合状態を求め、さらに、各ニューロンの応答特性を考慮して、ニューロン間のコネクションを推定する。一連の解析より、ミツバチ脳内の振動刺激の情報処理機構の神経メカニズムの解明を進める。
今年度はデータ解析、論文執筆を中心に研究を進めており、既存の設備、物品により実験を行うことができたために研究分担者は当該予算を執行しなかった。次年度は、標準脳へのレジストレーション及びその結果の検証のために実験データの取得が必要となり、今年度の予算と合わせて執行する予定である。
すべて 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 図書 (4件)
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