研究課題/領域番号 |
17K00421
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
宮下 尚之 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (20452162)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ベータ切断酵素 / アルツハイマー病 / 生体膜 / アミロイド前駆体タンパク質 / ラフト |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病進行の初期分子機構ではラフト環境下でβ切断酵素がアミロイド前駆体タンパク質(APP)のβ部位を切断する。一方で、疾患の進行しない通常の過程は、ラフト環境でない生体膜環境下でα切断酵素がAPPのα部位を切断する。この機構の理解はアルツハイマー病の機構の理解と抑制の為の創薬にも繋がるが、現状、α切断酵素とβ切断酵素の膜貫通部位の構造はわかっていない。本研究ではα切断酵素とβ切断酵素の膜貫通領域の構造予測と、様々な脂質環境下での APPとの相互作用に注目した分子シミュレ ーション研究を実施し、アルツハイマー病進行過程に脂質環境が与える影響と原因を調べている。 ベータ切断酵素の膜貫通部位の構造予測を実施し予測構造を得ることができた。ベータ切断酵素の膜貫通部位の構造は未だ実験的に解けていないので、本研究で得られた予測構造が世の中での最初の提案構造となる。また、予測したベータ切断酵素をラフト環境に組み込んだ粗視化モデルシミュレーションも実施した。ここからコレステロールがベータ切断酵素の膜貫通部位と相互作用していることが明らかになった。更に、ベータ切断酵素とAPPの相互作用を調べるためのシステム構築および、粗視化モデルシミュレーション研究も実施した。どうやら、APPとベータ切断酵素両方にある、あるモチーフ同士が結合に関与していることが明らかになった。これは新しく非常に重要な結果が得られたと申請者は考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、ベータ切断酵素の膜貫通部位の構造予測は完了し、予測構造を得ることができた。また、予測したベータ切断酵素をラフト環境に組み込んだ粗視化モデルシミュレーションも実施した。その解析を実施した。更に、ベータ切断酵素とAPPの相互作用を調べるためのシステム構築および、粗視化モデルシミュレーション研究も実施した。現在、そのコレステロールとの相互作用について調査中であるが、APPとベータ切断酵素両方にある、あるモチーフ同士が結合に関与していることが明らかになり、非常に良い成果が出たと考えている。この点は当初の想定以上の結果が出たと思われる。α切断酵素の膜貫通部位の構造予測・粗視化モデルシミュレーションに関してはまだ終了できておらず、この部分は次年度に持ち越しとなった。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り、α切断酵素の膜貫通部位の構造予測計算と、その粗視化モデルシミュレーションを実施し、ベータ切断酵素とα切断酵素の相違に関する研究をまとめる。その前に、平成30年度に実施したベータ切断酵素の膜貫通部位とAPPの膜貫通部位との相互作用に関する研究結果が非常に面白い結果であったので、この論文執筆も行う。現状、予測構造の検証に手間と時間がかかる程度で、順調に研究は遂行できており、次年度もベータ切断酵素の膜貫通部位と同様の方法で研究を推進する事とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究の打ち合わせおよび学会発表でアメリカに行く予定が次年度にずれたこと、論文投稿(数件)が次年度に延びたこと、購入予定のストレージの量の見積もりが取れなかったことが主な理由である。次年度に論文執筆および投稿を行うだけでなく、ベータ切断酵素に関する共同研究の打ち合わせと実施のためにアメリカ・ボストンに行き、また2月にアメリカ生物物理学会で本研究の総括を発表する予定である。
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