研究課題/領域番号 |
17K00425
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
奥村 貴史 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (50553400)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 医療用人工知能 / ユーザーインターフェース / 疾患類似度 |
研究実績の概要 |
診断に困る患者に遭遇した際、臨床医は検索エンジンや論文データベースに患者の呈する症状名を入力し、試行錯誤を経て疾患情報を収集する。この非効率な手法は、困窮する医療現場の負担を増すばかりでなく診断精度にも悪影響を及ぼすため、診断支援システムの発展が望まれる。しかし、現在の診断支援用AI研究は、診断アルゴリズムの研究開発を中心に発展してきた。その結果、患者情報の効率的な入力や診断結果の効果的な出力、複数アルゴリズムの併用手法等を実現するユーザーインターフェイスを主題化した研究を欠いており、実用システムの発展・普及の障害となっている。 我々の研究グループでは、診断支援システムの研究開発に求められる疾患知識ベースの構築と診断支援システムのプロトタイプの整備を終えている。本研究では、この基盤を活用し、診断支援システムにおける入出力の高品質化と診断性能の向上をもたらす統合的なユーザーインターフェースの探索的な検討を行った。 初年度である今年度は、患者情報の入力や診断結果の出力に際して、疾患間の類似度計算に基づいて各疾患を2次元に配置し、この「疾患マップ」を用いた入出力の可能性について検討した。本研究については、国際会議での発表を行い、さらなる発展を目指している。また、疾患類似度計算の高度化に加えて、利用医師の有する疾患知識量の推定技術について研究を進めた。こちらは、論文投稿を終えた状態となっている。さらに、医療用人工知能の結果出力に求められる疾患情報の自動生成に向けて、香港との共同研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画にのっとり研究を進め、国際会議での発表を行うことが出来た。また、これとは独立して、医師の疾患知識量推定に関するジャーナル論文を書き上げたが、現在投稿中であり掲載がまだ確定していない。以上を勘案し、「おおむね順調」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
医療用人工知能のユーザーインターフェース設計に求められる要素技術として、疾患類似度計算、医師知識量推定の研究を引き続き継続する。 医療用人工知能においては、医師による患者情報の効率的な入力が課題となっていた。そこで、情報検索システムにおいて検討がなされて来た適合性フィードバック技術の応用により、効率的な情報入力の実現を検討したい。たとえば、検索結果に表示された結果のうちユーザーがクリックした対象をフィードバックとすることで、検索結果がユーザーの意図にどれだけ合致しているかを認識し、検索精度や検索効率を向上させることが期待される。 また、医療用人工知能のユーザーインターフェースが利用する知識ベースの精度管理手法についても、検討を進めてきた。研究競争が活発化しているため、できるだけ早期の論文化を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果発表とオンラインジャーナルのpublication feeの支払いを年度内に実現することができなかったため。
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