研究課題/領域番号 |
17K00435
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高木 英明 筑波大学, システム情報系(名誉教授), 名誉教授 (30260467)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 医療・福祉サービス / 手術情報管理 / サービス科学 / データサイエンス / 待ち行列 |
研究実績の概要 |
本研究に協力いただいている国家公務員共済組合連合会 横浜南共済病院(神奈川県横浜市)においては、各診療科の医師による手術申込で電子カルテに記載された診療報酬上の術式名や手術部位等をまとめて、毎週の手術予定表に記入する簡易術式名称(以下、予定術式と呼ぶ)に変換する作業が事務職員・看護師の大きな負担になっている。そこで、手術スケジューリングの効率化のために、この作業の自動化に取り組み、まず、泌尿器科の手術で試みた。 同病院の泌尿器科における2016年度の手術は700件を超えるが,予定術式(基本形)は53種類、申込術式に使われた文字は僅か137種類であった。各文字が使われた申込術式に対応する予定術式について、文字毎に使用頻度を計算した。この学習データにBayesの定理を適用し、2017年度前期に実施された申込術式397件(44種類)について、予定術式(基本形)を予想して、それが実際の予定術式とどの程度一致するかを検証した。その結果、2017年度前期の手術について、新規の術式を除く申込術式383件(33種類)に対して、375件(97.9%)の手術、術式では29種類(87.9%)で予定術式を正しく予想できた。 高い的中率が得られた理由は、個々の診療科では、多くの手術が行われても、術式名称やそれに使われる文字の種類が限定的であることに依ると考えられる。本研究の方法により、週間手術予定表の術式の自動生成が実用化された場合には、毎年の申込術式から予定術式(基本形)への対応実績を学習データとして蓄積することにより、予測の精度が漸次向上することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、病院における手術室の効率的運営に資するサービスサイエンスやデータサイエンスの方法を、現実の病院のデータに基づいて開発することである。横浜南共済病院(神奈川県横浜市)の協力を得て、2016年度に行われた約6,600件の手術実施データ(病名や診療に関する情報を除く)が提供された。そのデータ分析と、手術室担当の看護師長との検討に基づき、手術スケジューリングよりも、上記5に示したような毎週の手術室運営の基礎となっている手術予定表の作成に時間がかかっていることが分かったので、まず、その作業の自動化に取り組くむことにした。本年度においては、泌尿器科の手術を取り上げて所期の目的を達成し、その結果をサービス学会第6回国内大会において発表した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の前半においては、本年度に泌尿器科の手術を対象として行った研究を他の診療科(外科および産科を予定)の手術にも展開する。方法論的には、本年度における単純な1文字ずつのユニグラムに対するBayesの定理に留まらず、最近のデータマイニングの方法を用いる可能性を探る。後半においては、診療科や術式ごとの手術室使用時間データのミクロな分析に基づく手術室割り当ての最適化アルゴリズムの開発に進む。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)今年度は、現実の手術室運営を分析し、過去に取り上げられていない課題に取り組んだ。そのため、課題の実態を複数のシステムで管理されているデータを照合して把握する作業、仕組みの理解、新しい研究方法の試行錯誤等に時間がかかり、研究結果は1診療科(泌尿器科)に関する年度末の国内大会での発表に留まったため、数件の研究発表等に必要と考えた予算を使い切れなかった。また、物品費も、ほとんど研究用書籍の購入にしか使わなかった。 (使用計画) 次年度においては、研究対象とする診療科が広がり、本年度の研究発表に興味を示された他機関の研究者からの有益な助言が得られると思うので、海外を含む多くの研究発表の機会があると期待できる。物品費としては、研究用書籍の購入に加えて、パソコンの購入を予定している。
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