本研究ではブラウジング型探索タスクのための情報アクセス支援手法の開発と評価を行った。ブラウジング型探索は、検索を何度も繰り返したり試行錯誤を含むような過程を支援する探索戦略の一つであり、リソース内容に応じたコレクション全体の概観を閲覧することにより、探索対象の内容を適切に把握したり、新しい観点で探索を行う手がかりを得たりすることが重要なポイントとなる。 本研究では、この研究目的を達成するため、いくつかのサンプルデータセットを対象として、それぞれのリソース群を概観可能な観点を整理したうえで、ブラウジング型探索のための観点に応じたプロトタイプ機能を定めた。 まず、データセットとして、国立教育政策研究所教育図書館が所蔵する戦前教科書コレクションを対象にブラウジング型探索支援の手法を適用した。この際、教育図書館で用いている教科書分類や教科書検定制度に基づく情報を構造化して抽出し、これらをLinked Open Data化したものをもとに、ブラウジング型探索の観点に設定した手法を適用した。開発した手法の一部は教育図書館における実サービスへの一部機能として提供することができた。 また、別のデータセットとして、筑波大学附属図書館の協力を得て、所蔵資料を探索するOPACアクセスログの分析を行った。さらに、実サービスでみられる典型的な探索タスク課題の特徴抽出を行うため、検索ログに見られるセッションとタスクとの関係、クエリとクリックスルーの関係性をもとにした検索システムを開発したうえで、性能評価のためのクエリセット構築と評価実験を行い、その有効性を確認した。この成果はブラウジング行動を直接に検索システムへ応用する試みであり、他のコンテンツ領域では広く採用されているものの、図書館システムへの適用はあまり見られていない重要な知見となった。
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