公共図書館運営に関する住民意思の形成過程を焦点とした研究として実施した研究成果は以下の通りである。 ①2019年1月に開催されたアメリカ図書館協会の冬季大会で収集した情報と,公共図書館運営に関する文献等により,図書館委員会・友の会・財団の各主体において住民が関与している実態から,アメリカの公共図書館運営の構造を整理した。この構造の特徴を「ガバナンス論」の観点から明らかにするとともに,既存の調査や文献に基づく日本の状況と照合し,(1)図書館運営に関する図書館長と住民とのコミュニケーション,(2)図書館協議会,図書館づくり住民団体などのアドボカシー活動による「住民―住民」関係の構築,の2点が,日本の図書館運営における検討課題であると結論づけた。この成果は,2019年6月8日に開催された「日本図書館情報学会春季研究集会」で発表した。 ②2019年6月のアメリカ図書館協会年次大会,及び,2020年1月の冬季大会に参加し,United for Librariesのセッション等において,図書館運営における住民の関与に関する情報を収集した。特に冬季大会では「住民-住民関係」におけるアドボカシー活動において,公共図書館の社会的な意義を端的に示すためのツールとして作成された,E's of Librariesに関する情報を得た。 ③研究期間を通じて取り組んでいた日本の図書館協議会の現状調査については,県と市区の条例と規則にもとづく現状把握について,設置自治体数と,委員の任命基準・定数・任期・任命主体などを集計し,2020年2月に神奈川県立図書館の「図書館アドバイザー・レクチャー」において,その成果の一部を発表した。得られた助言や意見を踏まえ,議事録の公開状況に関する集計結果を加えて論文としてまとめ,日本図書館協会が刊行する「現代の図書館」への投稿を予定している。
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