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2017 年度 実施状況報告書

ヨーロッパにおける近代的書物形態の成立と発展のプロセスに関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K00454
研究機関早稲田大学

研究代表者

雪嶋 宏一  早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (00507957)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード近代的書物形態 / ページ付け / 16世紀印刷本 / アルド・マヌーツィオ / ヨハン・フローベン / ヴェネツィア / バーゼル / リヨン
研究実績の概要

本年度は近代的書物形態の形成の中で研究が遅れているページ付けの起源とその発展について研究を行い、ページ付けを初めて採用したヴェネツィアのアルド・マヌーツィオのページ付け本17点とページが手書きされた印刷本と、彼の後にページ付け本を印刷したフィレンツェのジュンタによる本をミラノのアンブロジアーナ図書館と国立ブライデンセ図書館、フィレンツェの国立中央図書館、マルチェリアーナ図書館で現物調査を行った。その結果、アルドのページ付けがA,B,Cの3タイプに分かれることを発見した。Aタイプはページ番号が表ページではヘッドラインの右上端、裏ページでは左上端であり、Bタイプは表ページも裏ページもヘッドライン中央、Cタイプは表ページ、裏ページともヘッドライン右端に印刷されていた。アルドはこれらのタイプを1508年までに試行して、最終的にAタイプを採用した。アルドがページ付けを行った目的は最初は索引のためであったが、その後の6点は目次のためであり、残りの10点には索引も目次も付けず、ページ番号を有効に利用しなかった。
アルドの後にページ付けを行ったフィレンツェのジュンタは1514年にCタイプのページ付けを行い、続いてバーゼルのフローベンは1515年にAタイプのページ付けを行っており、アルドの影響を受けていたことが判明した。
この研究と同時に16世紀印刷本ベータベースにより、16世紀印刷本のページ付けについて調査を行い、1545-1600年間で5年毎に出版された印刷本を検索して、ページ付けを調査した。その結果、バーゼルやケルンを中心としたライン川流域の諸都市でページ付け本の出版が盛んであり、続いてリヨン、パリ、アントワープでページ付け本が印刷されたが、イタリアやドイツ南部・東部ではページ付け本の印刷は低調であったことが判明した。16世紀中にはページ付け本の印刷は地域差が大きく、一様ではなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度はヴェネツィアで最初に登場したページ付け本の調査を行い、アルド・マヌーツィオの印刷本を中心にした研究成果を慶応義塾大学で開催された国際会議The Book in Transition, the East and the West (2017年12月)で発表して研究者の関心を集めた。
また、16世紀印刷本ベータベースによる5年ごとの調査では16世紀のページ付け本の印刷がどこでどのような印刷業者によってどのような分野の書物で行われたかという全体的な傾向をつかむことができた。その結果を2017年度日本図書館情報学会研究大会で発表した。しかし、データベース調査はまだ未着手の年代と都市が多数あるため、次年度も調査を継続していかなければならない。
さらに、早稲田大学図書館収蔵のエラスムス校訂による1525年プリニウス『博物誌』はページ付け本の印刷が盛んになった頃のバーゼルのフローベン版であり、プリニウス『博物誌』中最初のページ付け本であるため、本書を詳細に研究して、ページ付けと索引の関係を考察し、さらにフローベンが用いた「ページ」を意味するラテン語によってまだ「ページ」という概念が定着していなかったことを明らかにした。この研究によって次年度の研究テーマがより明確になった。

今後の研究の推進方策

今後の研究としては2017年度に課題として挙がった16世紀印刷本データベースによるページ付け本の悉皆調査を継続して、未調査の年代と都市について調査を進めていき、2017年度に立てた推測が正しいかどうかを検証して、16世紀におけるページ付け本について印刷の時代別、都市別、印刷者別に経緯を詳細に追跡する。
ページ付け本が早くに発展したバーゼルの出版について、バーゼル16世紀印刷本を最も多数所蔵しているバーゼル大学図書館で調査を行い、バーゼルにおけるページ付け印刷の経緯、ページ付けと索引や目次との関係、「ページ」概念の定着化などについて考察する。
これらの研究を今年度内に開催される国内・国際学会で発表して研究成果の公開を図りながら、学術論文として発表する。
現時点では研究計画の変更は特に必要ないと考えている。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 西洋におけるページ付けの起源と発展過程について2018

    • 著者名/発表者名
      雪嶋宏一
    • 雑誌名

      学術研究:人文科学・社会科学編

      巻: 66 ページ: 67-83

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 1525年バーゼル版プリニウス『博物誌』について2018

    • 著者名/発表者名
      雪嶋宏一
    • 雑誌名

      早稲田大学図書館紀要

      巻: 65 ページ: 1-29

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 16世紀印刷本におけるページ付けの発展過程に関する研究2017

    • 著者名/発表者名
      雪嶋宏一
    • 雑誌名

      第65回日本図書館情報学会研究大会発表論文集

      巻: 65 ページ: 25-28

  • [学会発表] 16世紀印刷本におけるページ付けの発展過程に関する研究2017

    • 著者名/発表者名
      雪嶋宏一
    • 学会等名
      第65回日本図書館情報学会研究大会
  • [学会発表] The origin of pagination: a contribution of Aldus Manutius2017

    • 著者名/発表者名
      Yukishima, Koichi
    • 学会等名
      The Book in Transition, the East and the West
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17  

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