研究実績の概要 |
本研究の目的は,引用ネットワークを利用した検索において,その長所「キーワード検索では見つけられない適合文献を発見できる」を強化した新たな検索手法を開発することである。本研究では主として以下の四つのことをおこなった。 (1)共引用ネットワークの拡張に関して,「粗い共引用関係」に基づく拡張方法が,クラスタリングにおいても機能することを検証した。より具体的には,文献群を実際にクラスタリングする実験をおこない,「粗い共引用関係」に基づくクラスタリング手法が従来の共引用関係のみに基づくクラスタリング手法よりも性能が高いことを明らにした。 (2)共引用ネットワークの特性分析に関して,「多数の引用がおこなわれた段落における共引用関係の強度」について,調査をおこなった。その結果,多数の引用がおこなわれている段落における共引用関係の強度は,少数の引用がおこなわれている段落における共引用関係の強度よりも弱い傾向がみられることが明らかとなった。 (3)共引用ネットワークの拡張や特性に関する基礎的なアイデア(共引用関係の多段階化や文脈情報の利用など)の有用性について,より広く深い観点から分析した。分析をおこなう検索実験では,従来よりも現実の環境に近い本格的なデータセットを用いた。また,使用するアルゴリズムの種類数を増やし,共引用ネットワークに適したランク付けアルゴリズムについてより多角的に検討した。 (4)開発検索システムの実装にグラフデータベースを導入し,改良する作業をおこなった。これにより,グラフやネットワークに関する様々なアルゴリズムを効率的に利用できるようになり,効果的な検索手法開発をおこなえるようになった。
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