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2019 年度 実施状況報告書

「公共空間」としての図書館の先進的研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K00458
研究機関神戸女子大学

研究代表者

久野 和子  神戸女子大学, 文学部, 准教授 (80635524)

研究分担者 川崎 良孝  京都大学, 教育学研究科, 名誉教授 (80149517)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード学校図書館 / 公共図書館 / 第三の場 / 場としての図書館 / 社会関係資本 / 公共空間 / フィンランド
研究実績の概要

本研究では、経済的、教育的格差の拡大、子どもの貧困、いじめなど多くの課題を抱える日本社会において、自由で多様な出会いのある「公共空間」としての学校図書館、公共図書館が、学校コミュニティや生徒の文化活動を活性化し、社会関係資本(つながり)を効果的に醸成することを通して、生徒の学びや生活を支え、豊かにしうることを理論的、実証的に検討することを試みる。この研究目的を達成するために2つの項目を設定し、以下に示すとおり調査研究を行ない、質の高い研究成果を達成することができた。
(1)「第三の場」としての公共図書館: 韓国においてフィールドワークを実施する予定であったが、政情不安と新型コロナ禍のため実施できなかった。代わりにフィンランドで開館したばかりの公共図書館を視察し、これからの新しい図書館のあり方について新たな知見を得た。また、国内の先進的な公共図書館も視察した。それらの研究成果については雑誌記事や講演会等によって、迅速に社会への還元を図った。また、研究協力者もフィンランドの公共図書館についての単行書を刊行し、多様な観点から公共図書館の新たな意義と価値を明らかにした。
(2)良き「居場所」(=第三の場)としての学校図書館: 学校図書館が家庭にも学校にも地域にも「居場所」のない児童生徒の良き居場所(=「第三の場」)となりうること、そうなるための方策、そして「第三の場」としての学校図書館によってもたらされる多様な効果・効用について理論的、実証的に検討した。2019年度においては、これまでの研究成果を踏まえ、いくつかの優れた実践をおこなっている学校図書館でフィールドワークを実施し、アメリカの「場としての図書館」論に基づいて検証・考察を進めた。その研究成果として、年度末に単著の研究書『「第三の場」としての学校図書館:多様な「学び」「文化」「つながり」の共創』を出版することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

韓国でのフィールドワークを海外出張が可能な夏期休暇期間および年度末に予定していたが、夏期は韓国の政情不安のため視察を断念し、年度末は新型コロナ禍のため訪韓できなかったため、まったく実施することができなかった。そのため夏期は、韓国の代わりにフィンランドの公共図書館を視察した。しかし、多くの国内外の視察を予定していた年度末は、コロナ禍で国内外問わずどこにも行くことができなかった。また、年度末に多く予定していた研究協力者や他の研究者らとの会合や打ち合わせ、研究会、学会、図書館視察も新型コロナ禍のためすべてキャンセルになった。そのため、一年目の介護による研究中断の遅れを十分に取り戻すことができなかった。
このように、視察やフィールドワークの研究計画・予定の遂行については「遅れている」ものの、2019年度はこれまでの研究成果に基づき、論文の執筆、講演、学会発表を熱心におこなうと共に、単著の研究書を刊行し、大きな研究実績を達成することができたので「やや遅れている」とした。

今後の研究の推進方策

2019年度の大きな研究成果としては、「第三の場」としての学校図書館についてのこれまでの研究を総括し、研究書を刊行したことが挙げられるが、さらにこれからも学校図書館研究を進めていきたいと考えている。研究分担者・協力者は順調に研究を進めているので、連携協力しあって今後研究を進めていきたい。また、当初は主にアメリカ、北欧の図書館について研究調査を実施する計画であったが、研究協力者が北欧について、研究分担者の川崎がアメリカについて研究調査を積極的に進めているので、久野は日本やアジアの公共図書館、学校図書館に目を向けることを計画してきた。日本の図書館のあり方を探る上で、アジアの図書館の方が、文化や社会制度の大きく異なる北欧よりも参考になりうると考察・判断したためである。今後は、韓国の「小さな図書館」や日本やアジアの学校図書館、公共図書館を研究の中心に据えるとともに、欧米の新しい図書館なども適宜視察していきたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

一年目の介護による長期の研究中断の遅れを取り戻すことができなかった。一年予定が後ろにずれ込んでしまったのみならず、今年度フィールドワーク予定であった韓国に政情不安定と新型コロナ禍のため行くことがかなわなかった。研究発表を通して研究実績は構築できたものの、国内外の視察については予定通りに進まなかったので、今後コロナ禍が収束した際には精力的に国内、海外の図書館への視察、韓国でのフィールドワーク、研究打ち合わせ、研究会を積極的におこないたい。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 図書館を「サードプレイス」ではなく「第三の場」に2020

    • 著者名/発表者名
      久野和子
    • 雑誌名

      図書館界

      巻: 71(6) ページ: 311-311

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] ヘルシンキ中央図書館“Oodi”の機能・理念とその成果2019

    • 著者名/発表者名
      久野和子
    • 雑誌名

      カレントアウェアネス

      巻: 342(CA1963) ページ: 2-5

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 第三の場としての図書館2020

    • 著者名/発表者名
      久野和子
    • 学会等名
      香川県図書館大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 学校図書館の文化的な意義と役割: 「第三の場」としての図書館が創出する「文化・交流センター」機能~「学習センター」「情報センター」「読書センター」に続く新しい学校図書館機能の提案~2019

    • 著者名/発表者名
      久野和子
    • 学会等名
      第10回京都国際図書館フォーラム
    • 国際学会
  • [学会発表] 文献レビュー: ロス論文「頂点に立つ読者」2019

    • 著者名/発表者名
      久野和子
    • 学会等名
      第10回京都国際図書館フォーラム
    • 国際学会
  • [学会発表] 公共図書館は「第三の場」たりうるか2019

    • 著者名/発表者名
      久野和子
    • 学会等名
      岡山県図書館協会 岡山県図協セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] 図書館という「場」の社会的意義と役割 ~こんなに図書館が役立つなんて!~2019

    • 著者名/発表者名
      久野和子
    • 学会等名
      神戸女子大学公開市民講座
  • [図書] 「第三の場」としての学校図書館2020

    • 著者名/発表者名
      久野和子
    • 総ページ数
      209
    • 出版者
      松籟社
    • ISBN
      9784879843869
  • [図書] 図書館と読書をめぐる理念と現実2019

    • 著者名/発表者名
      川崎良孝・吉田右子・福井佑介・山崎沙織・三浦太郎・金晶・キャサリン・シェルドリック・ロス
    • 総ページ数
      267
    • 出版者
      松籟社
    • ISBN
      9784879843777
  • [図書] フィンランド公共図書館 : 躍進の秘密2019

    • 著者名/発表者名
      吉田右子, 小泉公乃, 坂田ヘントネン亜希
    • 総ページ数
      258
    • 出版者
      新評論
    • ISBN
      9784794811394
  • [備考] 神戸女子大学 久野和子研究室HP

    • URL

      http://www.kobe-wu.ac.jp/wu/semi/kuno/index.html

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公開日: 2021-01-27  

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