研究課題/領域番号 |
17K00461
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
白松 俊 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80548595)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | Linked Open Data / 市民協働 / シビックテック / 地域課題 / 情報構造化 / 議論支援 / ファシリテーション / 合意形成 |
研究実績の概要 |
日常的な非公開活動を選択的かつシームレスに公開データへと移行可能にするため,WebシステムMissionForestの機能拡張を行った.具体的には,ユーザアカウント毎に公開範囲・閲覧権限を設定できる機構を開発し,実運用した.その一環として,日常的な非公開活動の実事例に関するデータを収集した.具体的には,人工知能学会 市民共創知研究会における市民共創プロジェクトのデータと,名古屋工業大学 創造工学教育課程の学生が研究・学修の目標を記述したデータである. 特に,市民共創知研究会の市民共創プロジェクトについては,MissionForestにWeb API機構を追加し,市民共創知研究会に特化して開発されたWebシステム「みらいらぼ」と連携させることで,市民共創プロジェクトのデータを入力可能にした.これにより,市民と研究者の共創により地域課題に取り組む活動事例のデータを収集可能にした. また,公開された活動内容から新たな協働・共創の可能性を検討できるようにするため,社会課題タグのオントロジーをDBpediaから抽出する手法の開発,タグを用いた探索的議事録閲覧インタフェースの試作を行った. さらに,新たな組み合わせの協働・共創を検討する際に議論などのコミュニケーションが必要となるため,議論および合意形成の支援機構も試作した.具体的には,Web議論におけるファシリテータエージェントの問いかけ生成機構を開発した.その結果,表層的な問いかけ生成手法には限界があり,議論内容を構造化して理解する必要性が示された.そのため,議論内容を構造化したコーパスを構築した.さらに,議論のプロセスや場の空気を分析する手法の検討を行った. これらの成果について,国際会議EGOSE 2017,国際会議IEEE ICA 2017,人工知能学会全国大会,市民共創知研究会,情報処理学会全国大会にて発表した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日常的な非公開活動を選択的かつシームレスに公開データへと移行する機構については,アカウント毎の権限設定によって可能になった点で進展はあった.しかし,そのユーザビリティには未だ改善の余地があり,ニーズ分析も未だ充分ではない.大学研究室での運用を想定したニーズとして,活動データを発表スライドや論文,ソースコード等の研究成果物へと拡張する試みを行ったが,より幅広いユーザ層を想定したニーズ分析が必要である.市民共創知研究会での運用を想定したニーズ分析も行った.実際に利用した研究会参加者からのニーズ収集については,今後の課題である.外部公開用サーバではSPARQLエンドポイントとWeb APIを運用中だが,組織内共有用サーバとの併用については設計を再検討中である. 新たな組み合わせの協働・共創を検討する機構については,社会課題タグのオントロジーをDBpediaから抽出する手法の開発,および,タグを用いた探索的議事録閲覧インタフェースの試作を行った.また,議論などのコミュニケーションが必要となるため,議論および合意形成の支援機構についても検討し,ファシリテータによる質問の自動生成機構を試作した.質問生成機構は表層的な処理に基づく手法を採用したが,失敗例を分析したところ,議論文脈理解の重要性が示唆された.このことから,議論の内容とプロセスを分けて議論文脈を理解するモデルの検討を行った.しかし,スキルの相補性によって協働の可能性を推薦する機構については未だ未実装であり,当初の予定より遅れが生じている.
|
今後の研究の推進方策 |
日常的な非公開活動を選択的かつシームレスに公開データへと移行する機構のユーザビリティを改善する.具体的には,公開すべきタスクをまとめて選択して権限設定を変更可能にする.また,タスクに発表資料や各種リソースを紐づける機構を設計し,その権限管理についてもユーザインタフェースを検討する. また,今後は大学の研究室だけでなく,公共圏で活動する多様なステークホルダーを想定したニーズ分析を行う.そのために,市民共創知研究会における共創対話の場を活用する.実際に利用した研究会参加者からのニーズ収集を行い,それに基づいてユーザビリティの向上を図る. 新たな組み合わせの協働・共創を検討する機構については,スキルの相補性によって協働の可能性を推薦する機構を実装するため,まずはスキルオントロジーの整備を行う.また,スキルの相補性を評価する手法や,タスクの類似性と統合した協働推薦機構についても検討する. さらに,取り組むべき社会課題の重要性や活動の優先順位を検討・評価する機構を検討する.まずは,社会的文脈と取り組む主体の文脈から,取り組むべき社会課題を重み付けする尺度の設計を行う.また,タスクの優先順位についても取り組む主体の文脈から計算する手法を検討する.これらの尺度を定式化するため,文脈情報をどのようにモデル化すべきかについて,作業仮説を立てて検証を試みる.
|
備考 |
MissionForestは,活動のタスク階層構造を選択的にLinked Open Data化できるWebアプリケーションの試作版.
|