研究課題/領域番号 |
17K00464
|
研究機関 | 藤女子大学 |
研究代表者 |
平井 孝典 藤女子大学, 文学部, 講師 (20396336)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | フィンランド / グロンブロード / カトリック / アーカイブズ / 鞣皮紙 / 情報アクセス権 / 検閲 |
研究実績の概要 |
【研究の成果】本研究の目的は、フィンランドの図書館及びアーカイブズにおける実務の基底にある発想を明らかにすることである。ヘルシンキ大学図書館アーキビスト、エドバルド・グロンブロードによる中世カトリック教会関係資料に関わる実務に焦点をあてている。29年度はオーボアカデミ図書館のアーカイブズ資料に含まれていた、アーキビスト・グロンブロードによる検閲関係資料などを撮影入手することができた。19世紀フィンランドの情報アクセス環境を整える作業の一つ、資料活字化と印刷、それに対する検閲についての論点などを資料に基づき確認し成果を公表した。これまでの研究成果を踏まえつつ、入手済みの作業ノート及び作業報告の手紙も用いた。 【具体的内容、意義、重要性等】本研究の対象は、フィンランド中世カトリック教会資料に関わる実務である。グロンブロードはこの整理作業と並行し、中世資料を活字化刊行を続けた。これまでの研究代表者による研究成果では、情報アクセス権については触れてきた。しかしながら作業そのものの法的課題については十分に説明を行ってきたとは言えない部分がある。29年度の成果の一つは、ロシアとフィンランドの検閲制度を確認しつつ、残された資料で実務における法的課題について試みに論じられたことである。研究成果では、最初に、19世紀フィンランドの公文書管理と情報アクセスについて確認した。次に、大公国成立前後の情報アクセス環境を整える実務を検閲と関連させて述べた。さらには、19世紀フィンランドの検閲制度を紹介した。最後に、一次資料を分析し、グロンブロードによる、検閲制度への対処を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グロンブロード関係資料が所蔵されるアーカイブズ・図書館で、①閲覧(撮影)、②調査(内容確認)、③報告(発表と論文)という構成で研究を進めている。フィンランドでは、手紙など個人資料の多くは電子目録化がされていない。数冊のノート(国立公文書館も国立図書館アーカイブズもノートは階層ごとに作られている)で構成される紙目録で調べ、出納を要求することになる。目録自体にも詳細な記述はなく、請求と出納を繰り返して確認し、資料を撮影することになる。場合によっては時間をかけて分析し改めて資料を再閲覧することもある。29年度は計画に基づき、①作業ノート及び作業報告の手紙でグロンブロードの業務を確認し、②フィンランド各地に所蔵される手紙(オーボアカデミ他)を調査確認した。具体的には、これまでに入手済みの①作業ノート及び関連の同僚への手紙(国立図書館)に含まれる情報も踏まえつつ調査をした。また、②フィンランド各地に所蔵される手紙(オーボアカデミ他)を調査確認し、作業周辺の資料も閲覧した。特にオーボカデミ図書館で資料刊行での検閲関係控え資料を確認できたことは大きな成果である。29年度は、フィンランド国立図書館、フィンランド国立公文書館、オーボアカデミ図書館、フィンランド国立公文書館トゥルク分館などで資料を探索し撮影をした。
|
今後の研究の推進方策 |
記録管理やアーカイブズに関わって、そのような業務の重要性が19世紀フィンランドでは十分には認識されていなかった。当然、将来の利用者への配慮などの考えが十分に確立していなかった。このような状況で、グロンブロードはどのように認識し、どのように業務を進めたか、図書館やアーカイブズ関係者、大学教員らに出された手紙、あるいは公文書なども分析し、グロンブロードの業務を考える。これが研究推進の柱である。引き続き今年度は、①作業ノート及び関連の同僚への手紙で作業の骨格を整理報告、②関係者への手紙で作業の意図背景を確認、する予定である。29年度に検閲関係対処の文書を確認した。これに対応する政府、セナーッティ側の資料を国立公文書館で調査する所存である。関係のアーカイブズも引き続き訪問する。学会などで成果を報告する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
生じた状況の直接的要因は、一回限りではフィンランドでの調査は不十分と予想し、最初の旅費を少ない金額で打ち切り支給とした。最初の訪問で予定どおりの調査を終えることはできた。また、複数回の訪問は実現できなかった。ひとつには一回の訪問で入手できた資料が予想よりも多く、分析に時間を費やしたためである。また購入予定書籍が年度内に入手できないこともあった。結果として、残額が生じ、次年度の調査回数あるいは滞在日数を増やすこととし次年度使用とした。したがって、翌年度分として請求した助成金の使用計画は、旅費に主に使用する。加えて書籍の購入にも充当する予定である。
|