研究課題/領域番号 |
17K00467
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研究機関 | 東京国際工科専門職大学 |
研究代表者 |
齋藤 長行 東京国際工科専門職大学, 工科学部, 教授 (50454187)
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研究分担者 |
新垣 円 ビジネス・ブレークスルー大学, 経営学部, 講師 (70507631)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 青少年インターネット環境整備 / インターネット青少年保護指標 / エビデンスに基づく政策 / サイバー・ウエルビーイング / 行動インサイト / ナッジ / ネット依存 / 国際連携 |
研究実績の概要 |
青少年インターネット環境整備法附則第3条に基づき、若者のインターネット環境を定期的に評価するため、意識啓発政策に焦点を当てた縦断調査データを分析・評価した。分析・評価の結果から 、1)学校教育と家庭教育を通じて意識啓発教育が広がっているが、家庭教育におけるその普及は十分ではない。2)インターネットリテラシーを学ぶには、学校教育が大きな役割を果たしているということが明らかとなった。 次に、オンライン上の青少年を保護するための政策の方向性を検討するために、愛知県刈谷市の取り組みを参考に、行動経済学の観点からリバタリアン・パターナリズムに基づく青少年保護政策の有効性について検証した。特に、人間のヒューリスティックな意思決定プロセスへの対抗策としてデフォルトのルールを設定することの効果について検証した。その結果、保護者は「午後9時」のデフォルト時間を受け入れているか否かを分析したところ、低年齢層の保護者ほど、このデフォルト時間を支持していることが分かった。 さらに、OECDの青少年保護勧告が発令されて約10年が経過することから、2020年現在における、各国の政策の進展度合いを検証した。本研究では、OECD、欧州評議会、欧州連合、国際電気通信連合、国際連合IGF等の公開文書の文献調査により国際政策の進展度合いを比較分析した。その結果、1)青少年保護におけるエビデンスに基づく政策の進展が不十分であること、2)断片的な政策が講じられており、政策の一貫性が不十分であること3)国際協調による政策は、意識向上政策において取組まれていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、国際学術雑誌での学術論文掲載、国際学会での研究発表及びプロシーディングの掲載、国内学会における発表をした。さらに、経済協力開発機構(OECD) のThe Expert Group of the Revision of the OECD Recommendation on the Protection of Children Online研究活動において各国の研究者との連携基盤を構築した。OECDの研究成果は、2021年度に国際社会に対する政策勧告として公開されることが決まっている。
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今後の研究の推進方策 |
OECDの「インターネット青少年保護勧告」では、インターネットを利用する青少年の保護を講じるための国際的な政策課題として、1)エビデンスに基づく政策形成アプローチを採り、青少年保護政策を最適化させ、客観性・妥当性を高めること2)インターネットの青少年保護に関連する諸政策との連携・協調を図り、一貫性の高い政策を講じること3)国際協力の基盤を構築し、国境を超えるインターネットのリスクに対処することがあげられている。 今日、本勧告が規定されてから約10年の月日が経過しようとしている。先進国は、本勧告に準拠したかたちでの自国の青少年保護政策を講じなければならないという責務を負っている。このことから、勧告が規定されて約10年が経つ今日において、勧告が目指す3つの保護政策の目標がどの程度達成されているのかを評価する必要があるであろう。 そこで、2021年度の研究では、OECDの先進加盟国を対象に、インターネット青少年保護政策の進展を比較分析し評価する。比較分析の方向性としては、先進国において講じられた青少年保護政策の時系列分析行うとともに、各国間の保護政策を比較分析する。具体的には、国家政策・法整備を進展させる要因とは何か、国際連携による保護政策を進展させる要因とは何か、官民の協働による自主規制・共同規制を進展させる要因とは何か、エビデンスに基づく政策形成を進展させる要因とは何かを明らかにするための政策時系列分析・比較分析を行う。 これらの政策分析を行うことにより、OECDのインターネット青少年保護勧告が掲げる3つの政策目的を進展させる特質や社会要因及びそれらの相互関係を可視化することにより、インターネット青少年保護政策を進展させる要因を体系的に明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の国際学会参加費としての旅費を用意していたが、コロナ感染症の問題で、国際学会が全てオンライン開催となったため、旅費の予算を執行することができなくなった。そのため、基金執行期間延長の特例措置の申請を出し、受理されている。 未使用分の研究予算は、研究成果の公表のための予算として、国際学会の参加費等に充当する計画である。
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