研究課題
本年度の研究では、国際連合の子どもの権利条約を基にした各国際機関や会議体が講じるAI・デジタル環境の子どもに関する保護政策の構造を体系的に示すとともに、その相互の関係を明らかにすることに取組んだ。研究の対象とした国際組織・会議体は、国際連合、OECD、欧州評議会、UNICEF、G7、G20であり、これらの政策の基本的理念となる子どもの「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」の4つの権利を基に、AI・デジタル環境政策の方向性について言及した。特に、本研究課題ではアクションリサーチの手法をとり、研究実施者が有識者を務めるOECDのデジタル環境の子ども政策に関する有識者会議に参画し、「デジタル環境の子どもに関するOECD勧告」の策定に取り組んだ。その過程から、子どもにとって安全で安心なデジタル環境を整備維持するためには、1)子どもたちにリテラシーを身に着けさせること。2)子どもに対する取組や政策は、その年齢・発達段階を考慮すること。3)子どものプライバシー、個人データを保護する必要があることについて言及した。さらに、近年、人工知能(AI)の社会利用が拡大している一方で、AIが子どもに与える影響を考慮した倫理規定について十分な議論がなされていないことを鑑み、AIを活用することを前提とした子どものデジタル環境についても考察の目を注いだ。具体的には、国際連合子どもの権利条約を基に、内閣官房が策定した「人間中心のAIの社会原則」とUNICEFのAI倫理規定を比較・検証することにより、日本のAI政策が子どもの権利保護のために果たすべき政策課題を明らかにすることを試みた。その結果から、子どもの発達段階を考慮した AI の開発と利用のための環境を確保し、子ども特有のリスクに対する保護を実施し、子どもの権利保護に関する知識を政府や業界に提供することが必要であることを主張した。
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