研究課題/領域番号 |
17K00470
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
研谷 紀夫 関西大学, 総合情報学部, 教授 (00466830)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 古写真 / メタデータ / 日本研究 / MLA連携 |
研究実績の概要 |
2018年度は、昨年度に引き続き英米各機関の目録情報の収集に努め、主要な機関から提供を受けたほか、WEB上で公開されているメタデータの調査を実施し、これらの精査を実施した。また、ハーバード大学図書館の担当者に直接面会し全米の写真保存状況などに関するヒアリング調査を実施した。 さらに、公共機関だけではなく、民間において報道写真を収集し販売しているフォトストックエージェンシーにおける日本の戦前期の写真の収蔵・公開情報を調査した。特にその中でも現在世界最大規模の写真コレクションを要するGetty Imagesについての調査を実施するとともに、近年その行動記録である昭和天皇実録が公開された昭和天皇の写真について重点的な調査を実施した。調査においては、メタデータに表示された年月日やキャプションが史実に即したものであるかを検証した。その結果、概ね半数以上がメタデータの表記と撮影年月日との間にずれが生じていることがわかり、キャプションの内容も内容と異なる記述も多数あることがわかった。これらは、撮影年月日と配信年月日が混同されていることや、類似する写真が多く存在することが原因と考えられる。しかし、重要な歴史的な出来事と関係する写真も多いため、アーキビストによる検証が必要になることが明らかになった。 これらの調査から、英米においては公共機関だけではなく民間における報道写真を中心としたフォトエージェンシーにも多くの写真が所蔵されていること判明した。これらの検証結果については、国立歴史民俗学博物館が編集し、ミシガン大学出版局から発刊された電子書籍「Integrated Studies of Cultural and Research Resources」に掲載されたが、企業が保有する写真資料は数が膨大であるため本調査ではあくまでも参考資料とし、公共機関に収蔵されている資料と中心とした調査を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は昨年度に引き続き英米の主要機関における日本の古写真資料の概要について調査を実施した。特にアメリカにおいては、スミソニアン博物館、ハーバート大学、国立公文書館などについて重点的な調査を実施した他、California Museum of Photography,Memphis Public Library,California State University, Fresno Knox County Public Libraryなどのデータ収集を実施し、これらの中で本調査に該当する写真などの精査を行った。また、英国においても大英図書館などを中心に日本の写真資料の収集を実施した。その一方で両国とも地方や中小の機関に関する調査が十分ではないため、これらに関する調査を実施した。 さらに「研究実績の概要」でも述べたように、関連参考調査として、GettyImagesで公開されている報道写真資料の調査も実施したが、これらに含まれるコレクションは、「Bettmann」「Corbis Historical」「Gamma-Keystone」「Gamma-Rapho」「Hulton Archive」「Hulton Royals Collection」「Popperfoto」「The LIFE Picture Collection」「ullstein bild」「Universal Images Group」など10コレクションに日本と関連する写真があることがわかった。本調査では民間のサービスで公開されている写真資料は主要な対象とはしないが参考資料として最低限の情報を掲載する予定である。 以上などから、概ね目標としている機関からの情報が収集されつつあり、今後はそれらの精査に重点をおきながら、ガイドラインの構成なども考案しながら調査を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに取得されたメタデータの内容を精査した上で、これらの中で本研究に該当する資料を選別する作業を行っていく。特に写真は多岐に渡るため、これらについておおまかに分類した上で、本研究において主にとりあげる写真について対象を絞っていく。またアジア地域の写真であるが、必ずしも日本であることが特定できない写真もあり、日本と確定するのではなく、「東アジア関係写真資料」として掲載することも検討していく。また、英米の主要機関に所蔵されている日本の古写真資料に関する情報は把握されつつあるが、地方の機関などについては、まだ把握されていない地域もあるので、両国とも地方の博物館、図書館、文書館、大学などにおける調査を進めていく。特に、地方の機関については、近年は電子メールなどの手段でも情報提供がなされているので、これらの手段を用いて情報を収集していく。また機関によっては、写真1点1点に関する詳細はわからないが、アジア関連と思われる写真を収蔵している機関も多いため、詳細な目録ではなく、コレクションの概要だけを示すフォーマットも考案していく必要がある。また、既によせられた写真資料などからガイドラインに関する情報などの構成も決めていく予定である。特に日本の古写真について、メタデータを記述する場合、どのような点に留意が必要で、どのような基礎情報が必要かについて、必要な事項を選定していく予定である。なお、逐一情報が更新されるため、まとまった研究発表をすることが難しい状況ではあるが、19年度後半から20年度などにおいては概ね全体像がみえてくるため、まとまった段階でその成果報告などを発表していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、ハーバード大学図書館関係者との面談はこちらから訪問し、調査をする予定であったが、先方が来日し、こちらの調査と面談に応じたため、その分の経費が繰り越しとなったが、その一方で地方機関の情報の充実化が必要となっている。そのため繰り越し分は、2019年度の出張の日数や訪問地を増加させることによって地方の機関の情報を充実化する費用に充当する。またそれらの調査で得た情報を整理しまとめるアルバイトの謝金に充当することによって、情報のより一層の充実化をはかることとする。
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