研究課題/領域番号 |
17K00470
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
研谷 紀夫 関西大学, 総合情報学部, 教授 (00466830)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 古写真 / メタデータ / 日本研究 / MLA連携 |
研究実績の概要 |
本プロジェクトは2020年度が当初の最終年度の予定であったため、COVID-19の影響をうけながらも、夏の時期に英国と米国にある各機関から情報提供をうけ、その合計は120の機関となった。その中には、2019年度より重点的に調査を実施している地方の諸機関において確認された、戦前期に日本を旅行した外国人旅行者が日本の写真館で撮影したり、自ら撮影した写真が含まれている。写真館で撮影した写真には明治初期の写真場で撮影した写真資料も確認されており、日本写真史においても重要な資料が含まれている。 これら、個人が撮影した写真については、これまで写真帖や絵葉書などによって一般的に流通した写真では写されていない建物や地方の様子を写した写真なども多数含まれていると考えられ、希少性の高い資料である。さらに、米国のカリフォルニア州の機関を中心に日系移民が遺した写真資料などに関する目録情報も調査し、収録した。これらは日本時代の他に、移民後の様子の写真など、戦前期の日本人移民の実相をする写真資料の概要を含めることができた。 これらの調査結果は目録に反映されるとともに、前述した日本滞在時に撮影した外国人の写真資料に関しての論考も執筆し、主な保存機関や、それらの写真が一般に流通する写真との違いを明らかにした上で、当時の外国人が抱いた「まなざし」が異国情緒に溢れた日本の建築や自然、古器旧物といった典型的な事物だけではなく、農村や都市における労働の様子や一般市民の暮らしなど、より当時の社会の現実にも向けられていたことを明らかにした。(『情報研究』第53号に掲載予定) また今回の調査結果を踏まえ、ガイドラインにおいても、外国人旅行者が日本で撮影したり、購入した写真については、旅行の行程や関連地名、旅行記や切符などの関連資料やカメラに関する情報などを記述するなど、関連する情報の記載についての指針を追記した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年の初頭から世界的に流行したCOVID-19の影響で、調査対象である英米地域が長期間にわたってロックダウンを強いられ、本調査の対象機関の多くが影響を受けた。そのため後半フェーズで調査を実施していたほぼすべての機関で調査が一旦夏まで停止され、夏に一部再開したが、再び秋以降停止となった。そのため2020年度は英米の目録作成やガイドラインに関する調査は保留とし、日本国内で入手できる資料やインターネットでの情報の収集と、ガイドラインの改訂、既に蓄積された目録情報の精査などを実施した。
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今後の研究の推進方策 |
本来ならば最終年度となるはずであった2020年度はCOVID-19の影響で、英米における調査作業が進まなかったため、研究期間を一年延長することとした。2021年度においては、まだ完全ではないものの、少しずつ関係機関が再開してきており、作業が再開された機関から目録に関する最終調査の結果の提供を受ける予定である。各機関とも、これまで初期の調査による目録情報は提供されているが、後半期の資料や、日本側の研究プロジェクトが編纂した目録の英米各機関による確認などがまだ終了していないため、これらが未完となっている。そのためこうしたタスクの再開とともに、これらの行程を終了させる。そして、終了した目録については順次PDF形式の電子書籍としてまとめる。COVID-19の影響はまだ予断を許さないため、年末の段階までで一度最初のバージョンの目録を完成させることを目標とする。 またガイドラインについても、可能な範囲で意見聴収なども再開し、内容をまとめる。概ね英米などの英語圏における日本の資料収蔵状況を踏まえて、様々な研究などに用いることに必要なメタデータの記述内容などについてまとめているが、一昨年と昨年度に特に重点的に調査を行った、外国人による日本滞在中の写真や移民資料などについて、留意すべき点などを追記する。また、本研究では明治の写真師で、日本の風俗や風景に関する写真を掲載した写真帖を発刊した小川一眞と関係する資料が重要な調査対象となっていた。その小川一眞の生誕地である埼玉県行田市にある行田市郷土博物館では2021年度に、小川一眞に関する展示『近代日本の写真と出版~原田家と小川一眞』が開催されるが、その展示に協力をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、英米への出張ができなかくなったことや、調査が保留となったことによって当初の予定よりも差が生じた。そのため、これらをインターネットや日本での調査を実施する謝金の支払いなどに充当し、当初の用途を変更した。
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