研究課題/領域番号 |
17K00470
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
研谷 紀夫 関西大学, 総合情報学部, 教授 (00466830)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アーカイブ / 古写真 / 表象文化史 / 小川一眞 / 記録と記憶 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、COVID-19の影響で遅延していた英米圏からのデータ回答の整理や、既にデータを取得していた機関の中でも新たに判明したデータなどについてはその追加分の目録編纂を実施した。現状では英米で合計160館余の目録編纂が終了している。またCOVID-19の影響で先方での確認作業が終了していない機関が多数存在するため、その確認などを随時実施した。これらの機関の中でも、特に米国に所蔵されている機関については、日米間の国際交流の記録資料となるものが多く、これらの内容を「外交活動」「実業・財界活動」「研究・教育活動」「災害記録及び支援活動」「布教・伝道活動」「移住・開拓活動」といった分類を行った上で、各分類に属する写真の概要などを紹介し、こうした交流の記録や記憶を継承するためのアーカイビングをどのように実施していくかについて考察した論文を執筆した。(『情報研究』55号に掲載予定)また英国の写真については、Middlesex UniversityのMuseum of Domestic Design & Architecture (MoDA)に収蔵されて京都や一部名古屋などの社寺を写した写真資料の調査を実施していたが、一部については被写体を確定し、概ね明治10年~20年代の写真であることを確認した。京都や名古屋の寺社も明治の中期頃までに写された写真は少数で、海外に遺る貴重な写真資料であることが判明した。また、大英博物館に所蔵される写真から、明治後期における写真師小川一眞と八官町の博文堂の協業の様子が判明し、これらの成果を21年8月に行田市郷土博物館での待講演「行田出身の三兄弟『原田庄左衛門・小川一眞・小林忠治郎』と近代日本の出版・写真文化」で報告した。 また、上記のMoDAの調査において手がかりになった建造物の写真などをガイドラインの付録に付与する事などの検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査対象がCOVID-19によって最も影響の受けた英米を中心としていたため、日本側の作業は完了している目録でも、先方による確認作業がまだ続いているため、来年度もプロジェクトを継続することとした。また、機関によっては2000枚以上の写真を所蔵している機関もあるため、期間中に全ての写真の確認は難しいことも予想される。そのため、最終的な公開については、先に確認が終了した機関から公開するなど、段階を踏むことなども検討している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、既に目録化が終了した機関においても、新規に発見された資料などがあるため、それらの目録の追加を実施する。また、先方の機関による確認作業が継続中の機関については、こちらから確認作業を実施するとともにこちらからのサポートも実施する。また「概要」で示したMiddlesex Universityの件は、今後の古写真の建築を中心とした被写体特定の参考とすべくその過程を論文化する予定である。そして、それらから得た知見をガイドラインなどに掲載する。また、同じく「概要」で示した大英博物館などの調査によって明らかになった小川一眞に関する調査結果を論文にするとともに、その内容についての分析も実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
引き続きCOVID-19の影響で、英米の機関の中で、確認作業が未完了の機関があるため、これらの目録に関する日本での最終編纂に関わる業務が延期されたため差が生じた。これらについては調査を1年延期したため、次年度の編纂関連費用として用いることとする。
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