研究課題/領域番号 |
17K00471
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
近藤 誠司 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (60734069)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ローカルメディア / アクションリサーチ / 災害情報 / リスクコミュニケーション / 防災教育 / リアリティ / 社会的逆機能 / CREDO |
研究実績の概要 |
東日本大震災以降、我が国では、あらゆる組織や団体、地域や個人が防災活動に尽力することが求められている。しかし、政府や行政機関によるパターナリスティックな要請が、かえってネガティブな態度を醸成するという「社会的逆機能」の問題が生じている。 そこで本研究では、どのような取り組みを為せばポジティブな心性が生まれるのか、また、そうした順機能の傾向はどのようにすれば持続できるのか、実証的な研究をおこなうことにした。ここでポイントになるのが、地域固有の情報媒体、すなわち「ローカルメディア」の利活用である。 当初の研究計画では、4つのフィールドでアクションリサーチをおこなうため、STEP1:フィールドエントリー、STEP2:主たるアクターとのラポール形成、STEP 3:CREDO(防災に対する前向きなメッセージ)の採取、そしてSTEP4:CREDOの共有を実施することを目標にしていた。4つのフィールドとは、 神戸市長田区真陽地区、大阪府堺市南区美木多地区、滋賀県草津市山田学区、そして、京都府京丹波町である。 このうち、堺市南区美木多地区では、当初予定したような活動の進捗が望めないことが判明したことから、かわりに土砂災害に対する警戒が求められる福井県福井市高須町にフィールドエントリーすることにした。進捗を簡潔にまとめると、神戸市長田区真陽地区では、STEP1~4までが終了しており、ローカルメディアとして「校内放送」と「学校便り」の活用が進んでいる。同様に京都府京丹波町でもSTEP4まで終了しており、「CATV」の活用が進んでいる。滋賀県草津市山田学区ではSTEP3までが終了しており、「コミュニティFM」の活用が進んでいる。残る福井県福井市高須町では、手作りの「かわら版」の活用が図られていて、STEP2までは完了した。 このうち神戸市長田区真陽地区に関する成果を書籍にまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、もともと4つのフィールドにおいて、アクションリサーチを同時に進行させていくことを想定していた。その理由は、各フィールドの災害特性が異なることや、地域固有の情報媒体の多様性、すなわち、さまざまな「ローカルメディア」のポテンシャリティを相互比較をしながら探索するためである。 途中、1つのフィールドをスイッチする事態(大阪府堺市美木多地区→福井市高須町)もあったが、研究遂行上は大きな問題は生じなかった。しかし昨今のコロナ禍によって、残念ながら共同実践に関しては中断を余儀なくされている。 そこでこの間に、ひとまずの研究成果を整理・検討・考察して、執筆作業を進めることにした。2021年度には、筆頭著者として14本の査読論文を発表することができた。また、神戸市長田区真陽地区の成果をまとめた書籍の執筆作業を進め、2022年4月現在で脱稿しており、10月に出版する予定である。 これらのことをふまえると、「おおむね順調に進展している」と判断して差し支えないものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度もコロナ禍によって、共同実践を推し進めることには、一定の制約があることが想定されている。そこで、STEP4にあたる「CREDOの共有」や、各フィールド間の客観的な比較をすることまでの水準を求めるのではなく、ローカルメディアのポテンシャリティを個別に評価して、それらの成果をまとめていくことを検討している。 それぞれの地域において、それぞれのローカルメディアがどのようなインパクト(順機能と逆機能)を持つことができたのか考察をおこなう所存である。 特に、神戸市長田区真陽地区において利活用を図っている「校内放送」というローカルメディアに関しては、豊饒なデータを得ることができたことから、2022年度内に成果をまとめた書籍を出版する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍において交通費の使用額が大幅に減じているため、次年度使用額が生じた。最終年度(2022年度)は考察をまとめるために学術図書資料の収集等に振り向ける予定である。
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