東日本大震災以降、わが国では、あらゆる組織や団体、地域や個人が防災活動に尽力することが求められている。しかし、政府や行政機関によるパターナリスティックな要請が、かえってネガティブな態度を醸成するという「社会的逆機能」の問題が生じている。そこで本研究では、どのような取り組みを為せばポジティブな心性が生まれるのか、また、そうした順機能の傾向はどのようにすれば持続できるのか、実証的な研究をおこなうことにした。ここでポイントになるのが、地域固有の情報媒体、すなわち「ローカルメディア」の利活用である。 当初の研究計画では、4つのフィールドでアクションリサーチをおこなうため、STEP1:フィールドエントリー、STEP2:主たるアクターとのラポール形成、STEP 3:CREDO(防災に対する前向きなメッセージ)の採取、そしてSTEP4:CREDOの共有を実施することを目標にしていた。4つのフィールドとは、 神戸市長田区真陽地区、大阪府堺市南区美木多地区、滋賀県草津市山田学区、そして、京都府京丹波町である。このうち、堺市南区美木多地区では、当初予定したような活動の進捗が望めないことが判明したことから、かわりに土砂災害に対する警戒が求められる福井県福井市高須町にフィールドエントリーすることにした。 進捗を簡潔にまとめると、神戸市長田区真陽地区ではSTEP1~4まで終了し、ローカルメディアとして「校内放送」と「学校だより」の活用が進んでいる。京都府京丹波町でもSTEP4まで終了し、「CATV」の活用が進んでいる。滋賀県草津市山田学区でもSTEP4までが終了し、「コミュニティFM」の活用が進んでいる。残る福井県福井市高須町では、STEP3~4の内容を「個別避難計画」の策定と共有に変更し、手作りの「かわら版」の活用が定着した。
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