研究課題/領域番号 |
17K00477
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
内田 雅文 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (00245341)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 反復的随意運動 / 運筆 / ゆらぎ |
研究実績の概要 |
(1)身体動作の提示・誘導に関して;前年度までの成果として、通常歩行時に触刺激を体幹部へ提示する実験から身体左右方向の動揺が検討された。2019年度の研究では新たに運筆動作を取り上げ、触刺激による運筆動作(縦横方向の直線描画課題)の誘導を検討した。 (2)運動学習における習熟評価に関して;前年度までの成果として、同期タッピングと運筆を組み合わせた二重課題法に基づく実験系を用いた1被験者あたり数日に渡る運筆計測実験により運筆動作のゆらぎと運筆習熟との関係が検討された。2019年度は身体動作として新たに運指動作を取り上げ、その習熟過程を検討した。運指動作は日常片時も止むことなく、しかしヒトが行う身体動作の中でも極めて繊細な制御が求められる、多くの場合、随意な動作である。 本研究課題で従来取り上げてきた運筆動作も運指運動を一部含むが、運筆動作は必ずしも指に限定される動作ではない。運筆動作は前腕の指を含む手全体、状況に次第では前腕・身体全体による身体動作になり、手指により一度、筆記具がホールドされれば、運指動作なくとも運筆は成立する。この観点において運指動作と運筆動作とは切り分けられるものと考えた。実験では、スマートフォンデバイスの画面上で指示される文字をキー入力する課題に対して、画面上に表示されるキーボードのタイプとして一般に普及している「五十音順」フリック式入力の通常キーボードと、キー配置を変更して「いろは歌順」フリック式入力の特殊キーボードを用意。前者には日常的に使用しているため十分に習熟された運指動作を、一方、後者には未経験なそのキー配置から未習熟な運指動作からの習熟過程の表出を想定した。通常キーボードを用いた課題遂行時と不慣れな特殊キーボードを用いた課題遂行時との間で、それぞれの動態に生じる時間的なゆらぎを計測、その周波数特性から習熟度を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題が目指すところは、日常的な様々な反復的身体動作からゆらぎ成分を抽出・精査して、身体動作上のゆらぎダイナミクスを捕捉し、所望の身体動作に対する習熟度合いの推移を可視化することで、運動学習における学習進展を評価する運動学習支援システムへの道筋を示すことである。これまで運筆動作、歩行動作を身体動作の対象として扱ってきたが、2019年度から新たな試みとしてIT、eコマースなニーズが見込まれるであろうスマートフォン操作を取り上げ、実験系を構築。現状、被験者は数名程度ではあるが、本研究課題の提案手法に基づく実験系とその解析法が適用実行できる状況にある。したがってここまで概ね順調と判断する。前年度実績報告時、本研究課題で提案の実験系および解析法については、その適用は運筆動作に限られないことを記したが、運筆動作以外の評価事例としてスマートフォン操作を追加できたことは、今後、それぞれの習熟度解析において相乗的かつ有用な情報が期待できると考えている。これらの研究成果の公表状況は、学術論文1編、国際会議プロシーディングス2編、国内学会発表1回があった。以上より、本研究課題はおおむね順調に進んでいると判断し、当初の計画で定めた2019年度目標は、総合的に判断して達しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題が目指すところは、日常的な様々な反復的身体動作からゆらぎ成分を抽出・精査して、ゆらぎのダイナミクスを捕捉し、所望の身体動作に対する習熟度合いの遷移を可視化することであり、運動学習における学習進展を評価する運動学習支援システムへの道筋を示すことである。これまで被験者数確保に努めてきたところであったが、2020年度初頭の世界的社会事情により、今年度の被験者実験は実行が困難になっている。そこで、前年度までに蓄積してきた実験データを再度精査して解析結果を整理しつつ、本研究課題の最終年度として4年間の研究の総括して、次のステップに向け、新たに生じた研究課題を整理し、次の研究計画立案へつなげる。
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