研究課題/領域番号 |
17K00481
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
河村 理恵 信州大学, 医学部, 助教(特定雇用) (20735534)
|
研究分担者 |
涌井 敬子 信州大学, 学術研究院医学系, 講師 (50324249)
福嶋 義光 信州大学, 医学部, 特任教授 (70273084)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 遺伝学的検査 / 細胞遺伝 |
研究実績の概要 |
ゲノム情報を適切に医療に反映できる医療従事者の育成を目的として,本研究は遺伝学的検査で得られたゲノム情報について,適切に臨床細胞遺伝学的(cytogenetics)な解釈ができることを到達目標とした医療従事者向けのハンズオン式(体験型)実習プログラムの開発を目指している. 平成29年度は染色体異常症例に精通した臨床遺伝専門医,臨床細胞遺伝学認定士,認定遺伝カウンセラー等で構成された教材作成作業部会を立ち上げ,受講者の到達目標を具体的に設定し,異なる染色体構造異常症例を含んだ事例収集に努めた.また,必要に応じて候補症例の追加解析を行ない構造異常の再評価を行った. ①欠失,挿入,転座,逆位を含む様々な種類の染色体構造異常症例をリスト化し,設定した到達目標を達成できるかどうかを症例ごとに検討した.また,症例に応じた細胞遺伝学的解析(G分染法,FISH法,マイクロアレイ法)を実施し,染色体構造異常を再評価した.さらに,細胞遺伝学的解析を行った候補症例のうち,マイクロアレイ染色体検査にて派生染色体に端部欠失が検出されなかった不均衡型転座症例に関して新たな知見が得られたので,平成29年11月の日本人類遺伝学会で成果の一部を発表した. ②論文やデータベースに掲載されている染色体構造異常症例を参考に,画像編集等で細胞遺伝学的解析結果を人工的に作成する基盤を構築した.具体的に,G分染標本を作成し,染色体分裂像の画像を取得した後,画像編集で人工的に染色体構造異常を作成した. 染色体検査実習を受ける機会がほとんどない受講生を対象に,具体的事例を通して細胞遺伝学な解釈が出来る学習プログラム開発が本研究の目的である.そのため,受講生の到達目標を段階的に詳細に設定すること,設定された到達目標を達成するのに適した事例を抽出することは本研究を進める上で最も重要な点である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本実習プログラムを開発するにあたり,候補となる事例をリスト化し,候補とする目的・候補とするのに必要な追加解析・具体的到達目標の設定を1例ずつ検討した. おおむね順調に進んではいるが,論文やデータベースに掲載されている染色体構造異常症例を参考に,細胞遺伝学的解析結果を人工的に作成するための画像編集等で時間がかかり作業が遅れている.しかし,事例の設定は本実習プログラムを開発する上で最も重点的に行う必要がある部分であり,改善策として,画像編集と並行して染色体のイディオグラムを用いて作業を進めることで作業効率をあげることとした.
|
今後の研究の推進方策 |
初年度の計画通りに平成30年度も進める.具体的に,平成29年度に引き続き,2つの方法で事例の取集を行う.①国内外の細胞バンクから様々な種類の染色体構造異常症例の細胞株を購入する.細胞遺伝学的解析(G分染法,FISH法,マイクロアレイ法)を実施し,染色体構造異常を再評価する.②論文やデータベースに掲載されている染色体構造異常症例を参考に,画像編集等で細胞遺伝学的解析結果を人工的に作成することも試みる.染色体異常患者を多く診療・検査している臨床遺伝専門医,臨床細胞遺伝学認定士等の協力のもと,適切な事例を提案してもらう. 平成29年度に得られた結果を基に,教材の草稿を作成する.全国遺伝子医療部門ネットワーク,臨床細胞遺伝学認定士ネットワークを活用し,臨床細胞遺伝学の専門家から査読者を選定し,査読委員会を立ち上げる.査読委員会は,教材作成作業部会が選定した査読候補者のうち,その役目を承諾した者で構成される.査読委員会に送付された教材草稿に修正・加筆を行い,教材作成作業部会へ戻す.教材作成作業部会は査読委員会の意見をもとに題材の品質,向上を図る.ブラッシュアップされた教材案に対して,パイロット試験を行う.少人数の受講候補者に教材を使用してもらい,到達目標を達成するために適した事例か,理解を深める内容になっているかなどを検討し,さらに改良を重ねる.まずは10例程度の事例を用いて行い,徐々に事例数を増やしていく予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由)当初計画で見込んだよりも安価に研究が進んだため,次年度使用額が生じた. (使用計画)次年度使用額は平成30年度請求額と合わせて消耗品費として使用する予定である.
|