研究課題/領域番号 |
17K00483
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
小暮 悟 静岡大学, 情報学部, 准教授 (40359758)
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研究分担者 |
近藤 真 静岡大学, 情報学部, 教授 (30225627)
小西 達裕 静岡大学, 情報学部, 教授 (30234800)
野口 靖浩 静岡大学, 情報学部, 講師 (50536919)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 日本語対話訓練 / 音声発話訓練 / ディクトグロス / 音声認識 |
研究実績の概要 |
本研究は,第二言語として日本語を学ぶ留学生を対象とした,日本語音声対話訓練システムを開発するのが目的である.昨今の日本人学習者数の増加に日本人教師の増加が追いついていない現状において,独学が可能な日本語学習支援システムは有用であると考える. 本研究は平成29年度においては,「協調学習者を前提とした日本語対話訓練システムを開発」することが目的となっていた.そのなかで,特に,「対話訓練システムにおける協調学習者の役割の検討・考察」と「協調学習者を前提とした日本語対話制御」の2点を少目標として掲げていた.平成29年度の実績としては,「協調学習者とともにディクトグロスに基づく日本語学習が可能なシステムの開発」を達成した.このシステムでは,協調学習者エージェントは学習者の入力の正誤を判定し教師が設定したルールに従って適度に誤った復元文を自動生成する.これにより,学習者は,自身の入力した復元文との違いを発見し,協調学習者エージェントの誤りを指摘することが可能となる.このシステムについては,すでに,International Conference on Computers in Education (2017) にて発表済みである. さらに平成30年度以降の研究の布石として,このシステムに「話す」能力の学習の機能を実装した.これには音声認識の技術を利用した.想定する留学生の母語に応じて誤りを想定した発音辞書を予め用意することで,誤った発音をしても認識を行い対話を阻害しない.最後のフィードバックフェーズで発音誤りを指摘するこが可能となった.この研究の成果は,教育システム情報学会2017年度東海地区学生研究発表会で報告している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「協調学習者とともにディクトグロスに基づく日本語学習が可能なシステム」を開発した.ディクトグロスとは,教員が読み上げた学習対象言語で話された短文を,複数の学習者が聞き取り,復元し,学習者で相談して最終的な復元文を決定する,協調学習の枠組みである.本研究では,ディクトグロスを独学で体験できる日本語対話訓練システムを開発した.協調学習者エージェントは学習者の入力の正誤を判定し教師が設定したルールに従って適度に誤った復元文を自動生成する.特に学習対象となっている言語形式に関しては,学習者が正しい場合には,協調学習者が設定されている誤りから一つランダムに選択する.さらに,学習者が間違っていた場合は,協調学習者は学習者とは違う誤りをランダムに選択する.これにより,学習者は,教師が設定した学習対象の目標言語形式により注目することとなる.自身の入力した復元文との違いを発見し,協調学習者エージェントの誤りを指摘することが可能となる. さらに,平成30年度以降の研究であるところの「日本語初学者を対象とした音声認識技術」の開発の前段階として,上記で示した日本語対話訓練システムに,「話す能力」の学習機能を新規実装した.「聞き取った音声の復元文」を読んでもらい,発音が正しいかどうか判定する機能と,協調学習者との復元文の差異を指摘する簡易対話部分を音声で利用できる機能を実装した.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,計画にある「日本語初学者を対象とした音声認識技術」の開発を行う.平成29年度には,韓国語を母語とする留学生1名について,実際にシステムを利用してもらい,評価実験を実施している.その評価結果の分析は現在行っているところであるが,発音誤りの識別制度は 62.5%程度であり,まだ満足できる精度は得られていない.特に,日本語学習者の母語の上位である,中国語,およびベトナム語を母語とする留学生向けの音声認識技術についての検討を進める.まずは発音辞書の整備でどの程度対応できるのか検討し,それ以外に音響モデルの適用化などいくつかの既存技術の組み合わせにより認識率を向上できないか検討する. もう一点,現在のディクトグロスシステムから一旦離れ,「話す」能力と「聞く」能力に特化した協調学習支援システムの再開発を計画している.こちらについては,今後の研究計画にある「対話シナリオに応じた協調学習者エージェントのロールプレイ」「対話シナリオの構造化と対話への反映」「対話シナリオに沿ったシチュエーションにおける誤り判定」「学習者と教師エージェントとの対話」などの実現に向けて,まずは,「協調学習者エージェント」と「対話シナリオ」の部分について実装を予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
予算執行にあたっては,国内出張が予定よりも少なく,その反面,研究に必要となった物品等が予定よりも多くなる状況となった.これにより,多少の差額が出てしまった. 平成30年度以降においては,予算を見直し,出た差額で音声を利用した日本語学習支援に関する研究調査・成果発表のための国内旅費運用を行う.
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