研究課題/領域番号 |
17K00488
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
中川 祐治 愛媛大学, 総合情報メディアセンター, 教授 (20227755)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | e-ラーニング / 受講者観察システム / ニューラルネットワーク |
研究実績の概要 |
学習者が文章を読む際に発生する眼球運動の一種であるSaccade(一秒間に3回,一回あたり約30ミリ秒)に着目し,各種実験を行ったところ,学習に集中している時はSaccadeが観測され,集中度が低下するとSaccadeが観測されないという事実を2003年に確認した。そこで,学習時の眼球運動を画像解析により取得し,Saccadeの有無により学習への集中度を測定する『受講者観察システム』の実用化研究を行ってきた。これまでに開発したシステムでは,大まかな目領域に対して全方向微分フィルタを用いて黒目中心座標の検出を行っていた。しかし,この手法は黒目の半径に合わせたフィルタを用いなければ十分な効果が得られないという欠点がある。学習時に受講者とカメラの距離が変動することに伴い黒目の半径も変動することから,その大きさを合わせるためにフィルタサイズの推定をしなければならず,計算量が大きくなる。そこで,機械学習を用いることにより,黒目の半径に依存しない黒目中心検出手法を検討した。本研究では,ニューラルネットワークによる機械学習を用いて,大まかな目領域から直接黒目中心座標を検出する手法を試みた。学習データとして約1,000 組のデータを事前に用意し学習を行った。そして検出処理を行う際,その学習済みネットワークを用いた。従来の全方向微分フィルタを用いた手法と今回の機械学習を用いた手法を比較した結果,従来手法は高い精度を誇るが,検出を行う度にフィルタサイズ, すなわち黒目の半径を推測する必要がある。さらに,検出処理の計算はフィルタサイズに大きく依存するため,高速化に繋がらない。対して今回の手法は,高精度ではないが,従来手法と比べ黒目の半径を推測する手順を踏む必要がなく、さらに,検出処理の計算量はネットワークの構成にのみ影響を受けるため一定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,ニューラルネットワークによる機械学習を用いて,大まかな目領域から直接黒目中心座標を検出する手法を試みた。ニューラルネットワークにおける処理では, 30×30pixelの画像のどこに黒目の中心が存在するかという分類問題とし,垂直・水平方向それぞれに対して分類を行う。分類は画像のそれぞれの方向に対し10段階に分けたものと,瞬きなどで中心が確認できない時の計11種類とし、学習を行わせ、良好な検出精度を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ニューラルネットによる黒目中心検出では、目領域を複数領域に分割し、分割された領域の中で最も黒目中心に近い領域を黒目中心と決定している。現時点では10の領域に分割しているため、検出精度もそれほど高くはない。そこで、分割数を増加させビデオレートである1/30秒以内に計算を終える限界を見つけ出すことで、実際の学習環境で利用できる実用化に向けた研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度購入を見送ったモバイル端末を購入したが、価格が下がったことにより物品費の消費が減った。また、前年度に大学院生の学会発表を予定していたが、大学の講義日程の関係で思うように発表の機会を作ることができず、旅費の消費が減った。 今年度は最新のモバイル端末を購入し、計画通りシステムを実装する。
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