学習者が文章を読む際に発生する眼球運動の一種であるSaccade(一秒間に3回、一回あたり約30ミリ秒)に着目し、各種実験を行ったところ、学習に集中している時はSaccadeが観測され、集中度が低下するとSaccadeが観測されないという事実を2003年に確認した。そこで、学習時の眼球運動を画像解析により取得し、Saccadeの有無により学習への集中度を測定する『受講者観察システム』の実用化研究を行ってきた。これまでに開発したシステムでは、大まかな目領域に対し て全方向微分フィルタを用いて黒目中心座標の検出を行っていた。しかし、この手法は黒目の半径に合わせたフィルタを用いなければ十分な効果が得られないと いう欠点がある。通常の学習時では受講者とカメラの距離が変動することに伴い黒目の半径も変動することから、その大きさを合わせるためにフィルタサイズの 推定をしなければならず、計算量が大きくなる。そこで、機械学習を用いることにより、黒目の半径に依存しない黒目中心検出手法を検討した。このような環境変化に容易に対応できるように、U-Netを利用したセマンティックセグメンテーションによる黒目領域推定手法を構築した。本研究では、従来のPCで動作している受講者観察システムを、処理能力の劣る携帯端末で動作させることが必要であり、U-Netと呼ばれる大規模ニューラルネットワークで学習した結果を携帯端末に移植し実現する。U-Netの学習には学内の高性能コンピュータ(HPC)を用いて行い、期待する性能を得ることができた。
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