研究課題/領域番号 |
17K00495
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
小島 一晃 帝京大学, 理工学部, 助教 (30437082)
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研究分担者 |
松居 辰則 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (20247232)
村松 慶一 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (30634274)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 学習者理解 / 心的状態 / 視線 |
研究実績の概要 |
近年の知的学習支援研究におけるEducational Data Mining (EDM)では,学習者が持つ知識に留まらず,生体計測データなどを取得して心的状態などにも学習者理解の側面を広げている.EDMによる学習者理解の技術基盤は,学習支援システムによる支援の範囲を,旧来の研究の中心であった知識獲得だけでなく,学習継続のための動機付けなどのメンタリングなどにも拡張することが期待される.しかし,EDMの技術基盤は使用する生体計測データと知りたい学習者の状態に特殊化され,学習者の状態のみを出力するモデルを使用しているため,その心的状態に至るまでに関連した学習者の状況やプロセスなどを知ることができないことから,人間と学習者理解を共有できないという課題がある.本研究では,EDMの技術基盤を応用したシステムの実現にあたり,人間と学習支援システムとで学習者理解を共有することが可能な基盤を設計し,そのシステムの試作を行う.拡張や変更が可能な知識記述を導入し,EDMによる学習者理解を補強し,人間の教授者が介入できるシステム実現の基盤を提供する. 平成29年度は,EDMの技術基盤を応用したシステム実現のために,人間と学習支援システムとで学習者理解を共有することが可能な基盤の概念設計を行った.この技術基盤では,計測装置を通じて得られる学習者のデータから,学習者の振る舞いを抽出し,質的に記述する.そして,学習者の振る舞いと心的状態に関する知識記述に基づき,人間と共有可能な形で学習者理解を行う.ひとつのスモールケースとして,学習者が多肢選択問題に回答する状況を設定し,正答することへの確信と視線の推移パターンの関係から学習者理解を行う知識記述を構築するための実験調査を進めた.そのために,多肢選択問題を出題し,視線計測装置を通じて学習者の振る舞いを出力する実験システムを試作した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
試作した実験システムを用いて,学習者が多肢選択問題に回答する状況における,正答することへの確信と視線の推移パターンの関係を抽出し,学習者理解のための知識構築の準備を進める予定であった.しかし,視線計測機の不調などにより実験システムの準備が遅れたこと,実験調査の材料を検討するための予備実験に予想以上に時間を要したことから,平成29年度内に実験が完了しなかった.
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今後の研究の推進方策 |
まず,平成29年度に予定していた実験調査を完了させ,多肢選択問題への回答における,正答することへの確信と視線の推移パターンの関係を抽出し,学習者の振る舞いと心的状態を理解するための知識記述を構築する.この知識記述には,オントロジーを用いる.オントロジーとは,情報処理システムで基本構成要素として用いられる概念・語彙の体系である.我々の研究グループの先行研究において,オントロジーを用いて学習活動における学習者の振る舞いや学習と関連する情動に関する知識を表現する枠組みを提案しているため,これを適用する.その後,この枠組みによる学習者理解を人間の教師と共有可能か,人間教師にどのように受け入れられるかを探る実験調査を計画する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は当初予定していた実験調査が完了しなかったため,実験被験者に支払う予定の謝金がまだ未使用となっている.また,研究成果の発表を行うための知見の収集が完了していないため,研究発表のための旅費に未使用額が生じている.これらは,平成30年度以降に継続して実施する実験調査の人件費と,その成果発表の旅費として使用する予定である.平成30年度以降はその他に,実験調査で使用する用紙の印刷費,打ち合わせ,成果発表,関連研究の知見を収集するための旅費に予算を支出する.
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