研究課題/領域番号 |
17K00506
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
池田 心 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (80362416)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 問題生成 / PCG / 弱点発見 / ぷよぷよ |
研究実績の概要 |
本研究は,1.指導碁プログラムに必要な機能を列挙整理し,2.それらのうち実現可能かつ重要なものを実現する手法を考案し,3.最終的に被験者実験や専門家による評価を行う,ことを目的としている.このうち,平成29年度は,主に1.に必要な意見聴取と,2.の機能の一部を開始する予定であった. まず1.について,囲碁の愛好家,指導者,研究者,各種書籍やwebなどの調査を行った.前回科研費課題の“楽しませる囲碁プログラム”においても同様の意見聴取を行っているが,今回対象を“教える囲碁プログラム”にしたことにより,新たに多くの意見が寄せられ,また必要な機能も多くなることが分った.指導には,楽しませる技術に加え,弱点の発見,指摘,弱点克服のための問題作成や盤面誘導などが重要であることが強く示唆された. これを踏まえ,“ゲームのプレイヤは,どのような問題を面白いと思うか”“その個人差はあるか”“個人差に寄り沿って問題を提供するにはどうしたら良いか”を,平成29年度にまず解決すべき技術的課題であると定めた.そのうえで,囲碁よりも難易度が低く被験者も集めやすい「ぷよぷよ」および「リズムゲーム」において,これらの問題に取り組んだ.具体的には,ぷよぷよにおいては,部分問題である「なぞぷよ」(囲碁における詰碁に近い)を,自動で作成し,かつ各学習者の好みに合わせて選別するシステムを作成した.各問題には,「ぷよの個数」「ぷよの色数」「ぷよの詰んだ高さ」「正解の個数」など多くの計測可能な特徴量があり,これを入力として,「面白さ」「難しさ」などを予測する教師あり学習を行う.実験では,実際に好みに差があること,好みに寄り沿った問題が作成できることが分った.リズムゲームの方では,弱点部分の検出と,その部分だけを重点的に練習できるような問題の調整法を提案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.の要件聴取は順調に終了した. 2.の弱点発見や問題作成などの要素技術は当初開発しようとしていた通りのものであり,囲碁とは違うゲームにおいて,その結果も悪くはない. しかし,これとは別に,“囲碁においての”弱点発見や問題作成も平成29年度に一定程度進める予定であったのに,その分の進捗が遅れている.この原因は,コンピュータ囲碁に関する技術の進展が現在例外的に早く,“これがスタンダードな手法である”というものが半年程度で時代遅れになってしまう点にある.我々の本来やりたいことである「楽しませる」「教える」という研究内容を,現在の「強くする」という流れの早い研究と同時に行うことはエフォートを考えると困難であった.また,「強くする」ためには非常に大きな計算資源(たとえば,GPUを数千枚)が必要であり,これも困難さの原因である.
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今後の研究の推進方策 |
今後数年も,「強くする」という方向での研究は高速で進むと予想される.我々が作りたいのは,プロにハンデを与えて打ち負かすようなプログラムではなく,中級者レベルに優しく教えるようなプログラムであるが,「間違ったこと」を教えることを避けるためには,やはり一定の強さは必要になる. 現状,いくつかそこそこ強いプログラムのソースコード公開も行われ始めており,これを利用することで,強さに関する研究について行くエフォートを省略できるのではないかと考えている. 平成30年度以降は,29年度の他ゲームでの成功を踏まえ,囲碁における弱点発見や問題生成に取り組んでいきたい.また,自然言語を用いた解説なども可能なら取り組みたいと考えている.
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