2019年度は,主に「深層学習を用いた囲碁プログラムを用いて,過去に提案した接待碁の手法を再現または改良する」ことと,「複数のゲームに対して,指導を念頭に置いたコンテンツの自動生成を行う」ことを行った. 前者については,過去に用いたNomitanというプログラムが急激に進展する技術の中で旧式になったため,深層学習によるLeelaZeroという公開プログラムを用いることにした.これにより新たな課題が生まれたため,その解決に取り組んだ.具体的には,(1)相手の着手の遠くに打つという初級者にとって不自然に見える傾向の矯正,(2)良い手への極端な探索の重点化によって,手加減する手が十分探索されない問題の改善,(3)地合派・勢力派を演出する方法の改善としての,policy/value networkの再学習,を成功させた.被験者実験を通じ,不自然さが減ることや,地合派・勢力派の演出が棋譜から感じ取れることが確かめられた. 後者については,対戦テトリス,ガイスター,上海,リズムゲーム,RPGなどの幅広い対象について,「指導には,実戦では身に付きにくい技術を抽出した詰め問題が有効である」「指導には,プレイヤごとの弱点を見抜いて,それを訓練できる問題生成が有効である」「問題生成が困難な課題では,深層教師あり学習や,深層強化学習を用いることで良いコンテンツが作れることがある」ことなどを実証した. 補助事業全体を通じて,当初の目的であった「指導する囲碁プログラム」に向けて,指導碁に必要な技術の整理,自然な手加減を行う囲碁プログラムの作成に成功した.さらに,範囲を広げて一般のゲームの指導技術に関する多くの提案を行った.ゲームの部分問題を切り出して,それを生成する試み,面白さや難しさを推定する試み,それを指導に活かす試みについて成功し,囲碁の指導に向けての道筋をつけることができた.
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