ニホンオオカミとは日本の本州・四国・九州に生息していたオオカミの一亜種であり,江戸から明治時代にかけての狂犬病や人為的な駆除により絶滅したとされている.現存するニホンオオカミの剥製は4体のみであり,そのうち1体は和歌山大学が所蔵し和歌山県立自然博物館へ寄託している.しかしながら,頭部の膨らみなど,その剥製の形状は不自然であることが報告されている(宮本・牧 1983). そこで本研究ではニホンオオカミの骨格とイヌの解剖学の書籍(KONIG and Liebich 2016)を参考に,ニホンオオカミの本来の形状の推測とCG上での復元およびデジタルコンテンツ制作を行い,ニホンオオカミの教育・普及へ貢献することを目的とした.具体的には,まず三次元スキャナーを用いてニホンオオカミの骨格を計測し,三次元モデルを取得した.次に,骨格の三次元モデルの形状を整え,イヌの解剖学の書籍を参考に肉付けを行った.さらに,ニホンオオカミの剥製の体毛の長さと色合いを参考に体毛付けを行い,チュウゴクオオカミを参考に歩行のモーション付けを行った.最後に,自律的行動生成手法を用いてニホンオオカミの仮想生態を再現したデジタルコンテンツの開発と,そのコンテンツの紹介動画を作成し,おもしろ科学まつりの動画コンテスト部門にて公開・評価を行った. その結果,2020年度のおもしろ科学まつりにおいて,本動画は金賞を受賞し,審査員からの評価としては,「復元から開発までの過程がまとめられて,わかりやすかった」や「かつての自然を知るとともに興味を持ってもらえる良い機会になるので,多くの人に見てもらいたいと感じた」ことが挙げられた.この結果から多くの方々が本コンテンツに興味を持ち,本動画を通してニホンオオカミに関する学びを得るとともに興味関心を抱いたことが推察される.
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