研究課題/領域番号 |
17K00512
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
細井 浩一 立命館大学, 映像学部, 教授 (00268145)
|
研究分担者 |
福田 一史 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (00723785) [辞退]
中村 彰憲 立命館大学, 映像学部, 教授 (70367134)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | デジタルゲーム / メタデータ / アーカイブ / 図書館情報学 |
研究実績の概要 |
文化資源として注目を集めつつある「デジタルゲーム」の保存には多様な社会的要請や目的が想定される。しかし、今後も増え続けていくゲームタイトルを継続的に捕捉し、さらにその信頼性を担保しつつ、継続的に更新していくための実現可能なスキームを展望し得ていない。本研究は、標準的なゲーム保存・管理のためのデータモデルに関する研究と構築を進めることを第一義的な目的として進められた。またあわせて、データ収集の継続性を担保するという観点から、メタデータの自動更新を最終目的としたウェブ上のゲーム関連情報を自動的に収集するための「ウェブクローラー」の開発とその実用可能性の検証もあわせて目的としている。研究初年度であった2017年度においては、以下の研究実績をあげることができる。 1.先行研究調査を通じたデジタルゲームの目録に求められる概念整理と要件定義の策定と、それらに基づくメタデータモデルの設計をテーマとする研究成果の発表 2.メタデータの機械的収集に関する仕様設計のための社会調査と、それら仕様に基づくウェブクローラーの試作 3.立命館大学ゲーム研究センターの所蔵品を対象とする目録作成とオンライン目録の公開といった実践を通じた検証 上記の成果、実績を踏まえた上で、研究チームとして、6件の国際学会・研究集会での口頭発表、2件の国内学会における予稿掲載と発表、3件の国内研究集会での口頭発表、6件のワーキングペーパーの刊行などを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先に述べた研究実績毎に以下に記す。 実績1については、デジタルゲームの目録作成ならびにメタデータに関する先行研究について文献調査を行なった。ここでは、デジタルゲームの書誌情報についてその特性を踏まえた記述方法について議論が進展している。中心的論点となっているのは書誌データを記述するための標準的要件とされるFRBRであり、その合理性を評価する研究と、それを批判に捉え専用モデルの開発を志向する研究がある。本事業では2017年に国際図書館連盟が承認したFRBRと関連モデルを統合した書誌データモデル開発のためのハイレベルの概念モデルであるIFLA LRMの適用モデルとして、ゲーム目録のためのモデル設計を進めている。初年度は、とりわけ「作品」や「資料」の記述方法に着目し研究を進めた。本方策はゲーム目録のためのモデリングとしては、新規性の高いアプローチである。 実績2については、3社のゲーム企業へのメタデータの公開仕様に関するインタビュー調査を実施した。調査を通じてLOD技術の普及の進展と仕様策定方針が明らかになった。同技術はサーチエンジン最適化のための構造化データとして理解され、急速に普及が進みつつある。ただし、記録する項目とりわけその内容の標準化については、議論が不十分である。再利用性が高く、目録作成を協力に支援する方策である本技術に着目し、継続的に検討を進める必要性が明らかになった。またこれらLOD技術を踏まえたウェブクローラーの試作を実施した。 実績3に関しては、自律的また継続的な目録作成のための方法論構築とそこでの課題の抽出を目的として、立命館大学ゲーム研究センターの所蔵品をサンプルとして用いてカタロギングを進めた。デジタルゲーム目録作成のためのマニュアルと共に、4,000件の書誌データが作成された。さらに書誌データはオンライン目録(RCGS-OPAC)で公開を実施している。
|
今後の研究の推進方策 |
2017年度は本研究の初年度であったため、改めて今後の方針の明確化のために、文献調査や、施策ならびに予備調査を中心に活動をすすめた。2018年度以降は、以下のポイントに重点をおいて継続的に研究活動を展開する。 まず、設計中のデジタルゲームのメタデータモデルの詳細化を進める。とりわけ中心となる論点は「作品」「責任主体」「主題」の3点である。「作品」に該当する抽象的な記述対象について、作成中の目録やデータベースのデータなどサンプルの分析により、その定義と解釈ならびにレコード区分の基準や記述対象間の関連語彙を定義する。「責任主体」については、各主体がどのような役割をもって作品や資料に関連しているのか、ということについて分析を行い、作品や資料などとの間の語彙を定義する。「主題」は内容を示すものであるが、ゲームには多様な内容分析の切り口がある。ここでは、文献調査とサンプル分析を通じて、目録に必要な切り口とそこで用いる語彙について定義を検討する。これらの検討により、デジタルゲームへの有効なアクセスを提供し、再利用性が高いデータを作成するためのメタデータモデル構築の議論が進展するだろう。あわせて、これらを文化庁のメディア芸術データベースやOPACなどのオンライン目録に適用させる。 第2に、ウェブ技術の変化の動向を踏まえた、ウェブクローラーの開発を進める。近年LOD技術の普及が進み、構造化されたデータの提供が増加している。一方で、それだけでは書誌レコードを完成させるためには不十分である。その他のウェブ上の情報もクローラーを用いてあわせて収集し、構造化されたデータと統合化することが必要である。また記述対象の重複や分散の管理といった課題もある。このような論点を踏まえ、機械的情報収集の方法論構築を継続的に検討することで、コストダウンによる持続的また網羅性が高いデータ提供が可能になると考えられる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定よりもアルバイトの人月が少なめで進行したこと、および、年度内の消耗品等が当初予定より執行が少なかったことに、などに起因するが、いずれも研究の執行には支障がなく、研究計画は予定通り実施、完了している。次年度使用額については、昨年度末に執行タイミングの問題で執行できなかった購入品に充当することで大半が執行ができるが、残部分については消耗品の充当を計画している。
|
備考 |
西角友宏第4回インタビュー後半:コンシューマーゲームの開発と未来のゲームへの展望 http://pubs.iir.hit-u.ac.jp/admin/ja/pdfs/file/2102 以上はいずれも一橋大学との共同研究であり、同大学イノベーション研究センター発行のワーキングペーパー(IIRワーキングペーパー)として刊行したものである。
|