アレルギー疾患の罹患者数は近年著増しており、国民の2人に1人が何らかのアレルギー疾患を有していると報告されている。しかしながら、アレルギー疾患の根治的な治療法はいまだ確立されておらず、アレルギー症状を引き起こす物質(アレルゲン)との接触を回避することが専らの対処法である。そのため、アレルギー疾患対策のためには、患者自身が、生活環境を適切に自己管理することが重要である。しかしながら、吸入性アレルゲンである花粉やハウスダスト等は生活環境中に浮遊・拡散して存在する場合も多く、その所在を正確に把握し管理することは容易でない。そこで本研究では、このような環境アレルゲンの空間における動態をその場でリアルタイムに把握し、定量的測定の可能な技術を創出することを目的とした。 これまでに、プラスチック光ファイバを検出プローブとし、ダニアレルゲンDer f1を高感度に検出可能な蛍光検出システムを確立した。さらに、浮遊アレルゲンの捕集を目的とした気相成分捕集デバイスを開発し、高い捕集効率を得るためのデバイス構築条件の検討を行い最適化した。今年度は上記検討項目と並行して、連続的な免疫計測を可能とするため、抗体の固相化担体として利用可能な磁性カプセル粒子を用いて、磁力により測定感応部への着脱制御を行うことで、同一箇所で免疫計測を繰り返し行うことが可能な機構の導入について検討した。ここで利用する磁性カプセル粒子は本システムに合わせて新規に開発したものであり、作製方法について条件検討を行ったのち、抗体固定化能を有することが確認された。測定システムに導入可能な磁力制御機構を実際に構築することは出来なかったものの、作製した磁性カプセルについてはこれまでの評価実験結果をまとめ、国際学術誌に発表した。
|