| 研究課題/領域番号 |
17K00518
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| 研究機関 | 京都大学 |
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研究代表者 |
杉山 雅人 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (10179179)
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| 研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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| キーワード | ｐH / アクチノイド元素 / 重金属 / ケイ酸 / 生物地球化学過程 / 河川 / 湖沼 |
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| 研究実績の概要 |
pH・アルカリ度・塩分・溶存酸素などの主成分水質が時・空間的に大きく変動する水域では、微量元素、特に重金属元素・アクチノイド元素の濃度分布・化学動態が激変し、特徴的な生物地球化学過程を示す。本研究では、上述の主成分水質の中で最も鋭敏な影響を持つpHに着目する。pHが極端に低いあるいは高い値にある強酸性と強塩基性の河川・湖沼に焦点を当て、重金属元素とU、Thのアクチノイド元素の分布・濃度変動を詳しく明らかにし、これら元素の生物地球化学過程を解明する。
本年度の研究では、当初の予定を変更して、pHが高く深層では溶存酸素が涸渇する水域である汽水湖に着目して、その酸化還元環境の変化と金属イオン・栄養塩の生物地球化学過程の解析を試みた。溶存酸素濃度の増減による元素の酸化数の変化に伴って、溶存状態が極端に変化する元素の存在が明らかになってきたからである。UやThもそのような元素に分類されると言われている。このため福井県三方五湖での調査を行った。三方五湖のうち、菅湖・水月湖は汽水湖であって、深水層の溶存酸素は一年を通して涸渇している。三方湖は淡水湖であるが、季節的には無酸素層が出現する。また、琵琶湖南湖浚渫水域、河口湖も季節的には無酸素層が出現する水域がある。これらの湖で、鉄・マンガン・ケイ素の生物地球化学過程について研究した。淡水湖で無酸素深水層が出現する期間では堆積物間隙水中において、ケイ酸重合体が安定に溶存していることを発見した。室内実験の結果から、これは酸化的環境での水酸化鉄(III)沈殿へのケイ酸の吸着と還元的環境での水酸化鉄(III)沈殿の溶解に伴う吸着ケイ酸化学種の放出の過程を経て生成されることが明らかになった。このような発見はわれわれの知る限りこれまでに報告されていな。U、Thの分布の測定については、現在分析法について検討中である。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
U・Thの高感度分析法の確立がうまく進行していない。このためU・Thの分布と生物地球化学過程の解明に向けての研究に着手できていない。分析法の開発に注力する予定である。
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| 今後の研究の推進方策 |
U・Thの分析法の開発については今後も継続する予定である。
新たに、高pH水域で季節的に溶存酸素濃度が涸渇する場所では、ケイ酸の溶存重合体が生成することが発見された。この発見はこれまでに全く報告されておらず、必須栄養塩の一つであるケイ酸の化学動態は水域の生物群集の変動や生物生産量にも影響することから、将来の水圏化学研究にとって重要な課題になると考えれらる。したがって今後は、この生成機構やケイ酸重合体の生物地球化学過程の解明にも取り組むことにする。
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