研究課題/領域番号 |
17K00520
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
大谷 修司 島根大学, 教育学部, 教授 (50185295)
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研究分担者 |
林 昌平 島根大学, 生物資源科学部, 助教 (20725593)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 南極 / 土壌藻類 / 形態分類 / 遺伝子解析 / 種組成 / 経年変化 |
研究実績の概要 |
形態分類 今年度は黄緑藻のBotryiopsis callosaに同定された5株を中心に遊走子の放出を試み,遊走子の形態も分類形質として加え,生活環に基づく分類を行った。遊走子の観察のため寒天斜面培地で培養したB. callosa栄養細胞を,新鮮なBBM液体培地を含む小型シャーレに植えかえ15℃,約1500 lux,12時間,12時間明暗周期での条件で培養した。約1週間後,明期開始直後に遊走子を放出させることができた。本種は多核細胞で核の数は不明であったが,核をSYBR Goldで染色し,蛍光顕微鏡で焦点を変えて核の数を計測することが可能となった。葉緑体は紫外線励起すると輪郭が明瞭となり,葉緑体数を正確に数えることが可能となった。このように栄養細胞の形態的特徴に,葉緑体の正確な数,核の数,遊走子の形態を含めて分類学的研究を行う方法が確立できた。
遺伝子解析 黄緑藻のBotrydiopsis属11株,Xanthonema属14株の計25株について,rbcL遺伝子の解析を試み,各属10株について塩基配列を決定した。データバンクの既存の種と共にクラスター分析を行ったところ,Botrydiopsis属はB. callosa, B. alpina, B. constrictaの3つの群に分かれ,B. callosaの5株は形態的にも本種に一致した。今回解析したB. callosa 5株のrbcLは,決定できた領域(1309bp)が100%一致した。一方,南チロル地方から分離されたSAG 30.83株とは,いずれも99%が一致した。Xanthonema属はX. hormidioides, X. exille, Xanthonema sp.1,Xanthonema sp.2の4つの群に分かれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は,種の分類形質である遊走子の放出方法,撮影方法,葉緑体の輪郭を明瞭にする方法,核の染色方法など生活環に現れる形質を詳細に観察する方法を検討し,ほぼ確立することができた。この手法を用いて次年度以降,属でレベルで同定が留まっている培養株について形態と遺伝子解析の結果をあわせながら分類学的研究を進めていく。 遺伝子解析については,25株のうち,5株のrbcL遺伝子をPCR増幅できなかったことから,DNA抽出方法を変更する,または,プライマーを変更するなどしてrbcL遺伝子の解析を進める。 Xanthonema属はrbcLの塩基配列が99%一致する種類が複数有り,rbcLの遺伝子解析だけではどの既存の種に該当するか明らかにすることができない現状がある。そこで次年度は18S rRNAやITS領域の塩基配列も分析する。一部の菌類がコンタミネーションした株では18S rRNAが対象とする藻類とカビの両方が検出されるため,まず混入した菌類を除去する作業を行う。 次年度は黄緑藻のBotrydiopsis属,Xanthonema属以外の黄緑藻について行う予定であったが,初年度にBotrydiopsis属,Xanthonema属の分類が終了しなかったことから,引き続き両属について形態と遺伝子解析からの分類学的研究をすすめる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に得られた成果をもとに,黄緑藻のBotrydiopsis属,Xanthonema属の未同定の残りの培養株を中心に,昨年度と同様の方法で研究を行う。その後,黄緑藻のGloeobotrys, Heterococcusや緑藻についても同定が属で留まっている培養株があり,それらについても同様の方法で研究を進める。 遺伝子解析では,DNA抽出およびプライマー選択を再考し,すべての株のrbcL遺伝子を解析できるようにする。平成29年度はrbcLを中心に遺伝子解析を行ったが,次年度は18S rRNA,ITS領域についても分析し,両方の塩基配列の結果を分類学的研究に用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算を効率的に使用したため次年度使用額が生じた。本年度の予算と合わせて使用する。
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