研究課題/領域番号 |
17K00523
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
藤部 文昭 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 特任教授 (60343886)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 熱中症 / 低温死亡 / 人口動態統計 / 暑熱 |
研究実績の概要 |
厚生労働省の人口動態統計による熱中症および低温による死亡の日別データの提供を受け,地域別・性別・年齢層別等に整理・編集した。また,気象庁による気象官署・アメダス等の気象観測データを整備・編集した。これらのデータに基づき,熱中症死亡と気象条件との関係を統計的な手法を用いて調べた。まず都道府県単位の解析を行い,各都道府県の死亡率と気温との関係を年齢層別に解析した。その結果,熱中症死亡率の分布は年齢層によって異なり,60歳未満は夏季の平均気温と,80歳以上は年間最高気温の分布との相関が高いことが見出された。死亡率の年々変動は,各年齢層とも気温の年々変動に対応するが,80歳以上のほうが60歳未満よりも変動幅が大きく,経年上昇傾向も大きいことが分かった。また,死亡率の季節変化には気温の季節変化の位相差に対応する地域差があること,ただし月平均気温が同じなら死亡率は7月のほうが8月よりも5割ほど高いことが見出された. また,日々の熱中症死亡について2013年の東京23区を対象にした解析結果を取りまとめるとともに,全国を対象にした予備的な解析を行った。低温による死亡についても人口動態統計データを整理し,解析に着手した。 現状の暑熱環境について,地表面改変(都市化)の影響を定量化するために,夏季の関東地方を対象として,高解像度の領域気候モデルを用いた予備実験に着手した。都市のあり・なしの標準・感度実験をそれぞれ1ヶ月間ずつ行った。その結果,都市化の影響については,最高気温,平均気温,最低気温の空間分布が必ずしも同じではないことが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データの入手と整備は計画に従って進捗し,熱中症死亡に関する都道府県単位の解析によって興味深い知見が得られた。また,領域気候モデルを用いた数値実験についても計画に従って進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
熱中症死亡をもたらす気象条件の地域特性について,解析を継続する。日々の熱中症死亡率と日々の気温や湿度との関係について,地域的な違いにも注目しながら解析を進めるとともに,死亡率のほか救急搬送数の資料を利用して両者の空間・時間変動の特性を比較し,その共通点と違いを明らかにする。また,いくつかの大都市について,市区ごとの熱中症死亡率の分布と気温分布との関係や,社会的要因 (生活水準,世帯構成など) との関連について調べる。 低温による死亡についての統計解析を行い,死亡をもたらす気象条件の地域特性を調べ,低温による被害と熱中症による被害の気象学的な類似点・違いを明らかにする。 大都市域の熱中症死亡をもたらす局地気象の特徴について,数値シミュレーションを継続する。限られた計算資源を考慮し,より多くの事例を対象とした長期実験,もしくは,事例を特定した上でのより高解像度の実験を進め,熱中症死亡の多発をもたらす気象状態について,大気・海洋プロセスおよび都市効果の寄与を評価する。 以上の結果を,熱中症や低温による被害の抑止に向けた基礎的知見として取りまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度に購入を予定していたレイド装置については,当面は現有のものを利用し,残額は30年度以降の研究経費として活用することとした。
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