研究課題
基盤研究(C)
18年間の人口動態統計データを使い,熱中症および低温による死亡率と気象要素との関係を調べた.空間的には都道府県ごとと市区町村ごと,時間的には経年変化,季節変化,日々変動について統計を行った.熱中症死亡率は気温が高いほど,低温死亡率は気温が低いほど大きい傾向があるが,死亡率と気温との関係は年齢層や季節,地域によって異なり,熱中症については暑熱馴化の効果が示唆される.また,熱中症・低温による死亡率は平均所得の低い市区町村で高い傾向があり,社会的要因にも影響されることがうかがえる.
気候学
本研究により,日本の熱中症・低温による死亡と気象要素との関係について一連の統計事実が得られ,また,熱中症・低温死亡に対する社会的要因の寄与が検証された.これらの知見は,これまで経験的あるいは定性的な理解にとどまっていた熱中症被害の気候学的特性を統計的に裏づけ,併せて低温死亡の実態を明るみにするものであり,熱中症や低温の被害を抑止していく上での基礎資料になることが期待できる.