研究課題
大気中の二次有機エアロゾル(SOA)はPM2.5の中でも主要な成分の一つであり、その動態解明は重要な課題である。その中でも、粒子状有機硝酸(PONs)はSOAの中で重要な側面を持つ可能性が指摘されているが、現在までの研究例は極めて少ない。本研究では、先行研究で開発したガス状有機硝酸(GONs)連続測定装置を応用し、PONs連続測定装置を開発することが最初の目的である。また、開発した装置を能登半島珠洲に設置し、PONsとGONsの同時連続観測を実施、特に大陸からの越境汚染による影響を中心とした PONsとGONsの動態を明らかにすることが最終目的である。平成29年度においてはまず、能登半島珠洲におけるPONsの連続観測を開始するために、熱分解-キャビティ減衰位相シフト分光法によるPONs 連続測定装置の開発を行なった。GONsや二酸化窒素などPONs測定の干渉となる気体成分を除去するための活性炭デニューダー以外は、ほぼGONs測定装置と同じ原理のため、活性炭デニューダーの最適化について行った。活性炭デニューダーについては、気体成分の除去効率がほぼ100%であること、PONsの透過効率が90%以上であること、連続観測に耐えうるのに十分な、数ヶ月以上の破過容量を有することを確認した。平成29年11月初頭より、本装置によるPONsの連続観測を開始した。現在まで大きなトラブルは生じていないが、平成29年度終了時点では、大規模な越境汚染イベントが観測されず、また、解析するのに十分なデータが揃っていないため、詳細な解析については進んでいない。一方、活性炭デニューダーをより小型で扱いやすいものにするため、活性炭素繊維シートを用いた活性炭デニューダーの開発についても現在行っている。こちらについても、従来の活性炭デニューダーとほぼ同等の性能が得られることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度の実施計画は、PONs連続測定装置を構築し、能登半島珠洲においてGONsとPONsの同時連続観測を開始することであった。それについては、予定より早く平成29年11月初頭から実施することができた。また、現時点で連続観測に支障をきたす大きなトラブルは生じていない。一方、現時点では解析するのに十分なデータが揃っておらず、詳細な解析については進んでいないため、当初の計画以上に進展しているとまでは言えず、おおむね順調に進展している状況と考えられる。
現時点では計画通りに進んでいるため、平成30年度においても当初計画通りに進める予定である。具体的には、能登半島珠洲における連続観測を前年度から引き続いて行う。PONsとGONsの同時観測により、有機硝酸のガス・粒子分配についての知見を得る。また、大陸からの越境汚染が起こっている事例を抽出し、珠洲で同時に観測を行っている種々の大気汚染物質との関係性について調べる。また、大きなトラブルがなければ平成30年11月初頭には観測開始から1年経過することになるので、PONsの季節変動についての知見も得られると考えられる。
(理由)計上していたNOx計コンバータカートリッジを平成29年度内に購入する必要がなくなったなど、予定よりも消耗品費の支出が少なく済み、次年度使用額が生じた。(使用計画)次年度使用額分の一部は、消耗品費の購入に充てる。また、装置のメンテナンスや、国内外の学会発表のために生じる旅費を中心に使用して研究を進める予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Anal. Sci.
巻: 33 ページ: 519-524
10.2116/analsci.33.519
Sci. Total Environ.
巻: 592 ページ: 178-186
10.1016/j.scitotenv.2017.03.122
大気環境学会誌
巻: 52 ページ: 167-176
10.11298/taiki.52.167
Aerosol Air Qual. Res.
巻: 17 ページ: 2981-2987
10.4209/aaqr.2016.12.0557
Atmos. Environ.
巻: 171 ページ: 91-97
10.1016/j.atmosenv.2017.10.014