研究課題/領域番号 |
17K00528
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研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
槻木 玲美 松山大学, 法学部, 教授 (20423618)
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研究分担者 |
本庄 三恵 京都大学, 生態学研究センター, 研究員 (30450208)
加 三千宣 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 准教授 (70448380)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プランクトン / ウイルス / 生物間相互作用 / 近過去 / 環境変化 / 琵琶湖 / ミジンコ / 古生物 |
研究実績の概要 |
本研究は、世界有数の古代湖である琵琶湖でこの100年間で微生物間相互作用がどのように変化してきたのかを堆積物コアに残る生物遺骸やDNA情報に基づいて明らかにすることを目的としている。 本年度は、堆積物の年代軸を確定させ、遺骸分析や遺伝子解析の結果に基づいて過去100年にわたる宿主、動物プランクトン群集の変動とウイルス画分のDNA濃度とウイルスリードに基づくウイルス叢の変遷を復元した。またミジンコ2種の休眠卵サイズを測定し、同時に12s rDNAとPCR-RFLP法により種判別を行うことで、種判別につながる休眠卵の形態的特徴(サイズ)の違いを明らかにした。さらに昨年度と同様にミジンコ感染ウイルスを検出することを目的として、琵琶湖のミジンコを6月~8月にかけて5回採取し、直後に腸内細菌の除去を目的とした培養実験を実施し、ウイルス検出のためのミジンコ個体を約500個体確保した。 これまでの遺骸分析結果から、1998年に突然、出現したとされるDaphnia pulicariaは、その後、現在にかけ増加傾向を示し、逆に、昔から生息するD. galeataは減少傾向にあることが判明した。興味深いことに、D. pulicariaが増加する時期は、先行研究によると餌となる植物プランクトンが減少し、捕食者のホンモロコが著しく減少する時期に一致していることから、本種が増えられたのは餌の増加というより、捕食圧低下に起因する可能性が見えてきた。一方、次世代シークエンサーによるウイルス解析では、ウイルス回収法の検討を行い、100年以上前の堆積層からウイルス配列の取得に成功した。さらにウイルス画分のDNA濃度は、富栄養化した1970年代頃を境により新しい堆積層で急激に増加していることを突き止めた。GenomiPhiを使用することでバクテリオファージの割合を抑え、過去のウイルス叢を復元できることも判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、堆積試料の解析から過去100年にわたる動物プランクトン群集やウイルス画分のDNA濃度、ウイルス叢の変遷を明らかすることができた。次世代シークエンサーを用いたウイルスゲノムの配列を網羅的に取得する解析も実施済みである。またミジンコ感染ウイルスを検出するための実験を実施済みのミジンコサンプルは、累計500個体程、蓄積できたことから、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)プランクトン相の復元とその変動要因の解析 ミジンコ2種(Daphnia pulicaria, D. galeata)の動態について、近年、琵琶湖で生じている生物相や環境変化との関係を比較検討し、その変動要因を明確にする。またミジンコ感染ウイルスは、堆積試料に残る休眠卵から検出できることが知られているため、休眠卵量の復元を行うと同時に、休眠卵からウイルスの検出を行い、時代によって感染ウイルスに違いがあるのかを検証する。一方、大型緑藻類や珪藻類は殻が堆積試料に残ることから、これらの顕微鏡観察を行い、植物プランクトン相の復元も試みていく。上記の解析と後述するウイルス叢の解析を通じて、宿主プランクトン相と感染ウイルスの時系列データを取得し、両者の動態が過去100年でどのように推移してきたのかを明らかにする。
(2)ウイルス叢の解析 次世代シーケンサーを用いて得られた、堆積物コアのウイルス叢の解析を進める。特に、これまでの解析から、富栄養化が進行した1960-1970年代の前後で、ウイルス画分のDNA濃度が大きく変化することが明らかとなったことから、2019年度はウイルス叢に変化が見られるのかについて、群集解析を行う。さらに、年代によって特徴的なウイルス配列を抽出、時系列変動の復元を試みると同時にミジンコ感染ウイルスの解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた消耗品が年度内に購入できなかったため。繰り越し分は2019年度、その購入に使用する。
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