研究課題/領域番号 |
17K00534
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
谷川 朋範 気象庁気象研究所, 気候研究部, 研究官 (20509989)
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研究分担者 |
長 幸平 東海大学, 情報理工学部, 教授 (90256199)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 分光計測 / 偏光 / 放射伝達 / 積雪 / 衛星観測 / 湿雪 |
研究実績の概要 |
(1) 分光測定装置の開発および分光観測:湿雪(濡れ雪)の光学特性を測定するための分光偏光測定装置を開発した.偏光プリズムの光軸中心に360度回転する回転機構の自動化を行い,既存の分光器とゴニオメータを組み合わせることで,短時間のうちに高精度な分光偏光情報を取得することが可能となった.本装置を用いて,湿雪を含む様々な積雪の分光偏光測定を行ったところ,特に短波長赤外域において,湿雪の偏光度が乾雪の偏光度に比べて高くなる傾向にあることが分かった.このほか,基本的な振る舞いとして,積雪偏光度の反射角・方位角依存性を確認し,また,積雪粒径依存性が近赤外域・短波長赤外域だけでなく,可視域においてもわずかに存在することが分かった. (2) 積雪放射伝達モデルの高度化:現実の積雪粒子に応じた平均的な物理特性を持ち,且つ,分光放射特性をうまく再現する実用的な積雪粒子モデルを用いて,新雪からざらめ雪まで大小様々な積雪に対応する光散乱特性の計算を行った.衛星データを用いた積雪監視システムの開発に資するため,この計算結果をもとに地上設置型の放射計データから積雪粒径を求めるためのアルゴリズムを開発した.地上検証観測データを用いて積雪粒径の精度検証を実施したところ,高い精度で推定できていることが分かった.この他,JAXAやNASAの地球観測衛星の他に,気象庁の静止気象衛星ひまわり8号を用いた積雪監視システムの開発に着手した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 分光測定装置の自動化により,これまで手動で調整していた光軸中心の回転機構によるバイアスが低下し,測定時間および測定効率が大幅に向上した.また測定精度も既存のものと比較して向上した.偏光分光測定を実施し,現在,湿雪の光学特性の解析を進めている. (2) 衛星データの解析に必要な実用的な積雪粒子モデルによる光散乱特性の計算を実施した.地上における放射計データと地上検証観測から,高い精度で積雪粒径のリトリーバルができていることが分かった.地球観測衛星の他に気象庁の静止気象衛星ひまわり8号を用いた積雪監視システムの開発を進め,衛星データ解析・監視システムの構築に着手した.
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今後の研究の推進方策 |
(1) 分光測定装置による分光偏光測定を行い,湿雪を含む様々な積雪の光学特性を明らかにする.また分光情報を用いた多様な積雪物理量の検知手法について検討する. (2) 質的な積雪監視システムの開発に必要なアルゴリズム開発を行う.JAXAやNASAなどの衛星データを用いた衛星データ解析・監視システムの構築を進める.
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