4年間の測定値を集計するとPM2.5≧15μgm3かつPM1/PM2.5<0.5となった日は10日(2017年)、6日(2018年)、13日(2019年)、13日(2020年)であった。これらはPM2.5-1の増加によりPM2.5が上昇したため、テープろ紙を利用してPM1とPM2.5-1中の無機元素を分析した。例として2017年5月11日18時~12日はPM2.5平均値が18.9μg/m3。PM1/PM2.5比は5月12日0時~6時に0.2台まで低下したが、その後上昇し12時以降は0.7以上となった。比が低下した時間はPM2.5-1のAl、Ca、Ti、Na、Znが増加したのに対し、9時~12時はPM1のV、Cd、Pb、Crが増加した。前者は自然起源、後者は人為起源元素である。夜間から早朝は自然起源粒子の影響、日中のPM1増加は都市部からの輸送を示唆していた。 2018年夏季に富士山頂でPM1の24時間採取を、2019年は12時間採取を行った。PM1はPM2.5と比べて人為起源元素の濃縮が見られた。昼夜別PM1濃度は日中3.2μg/m3、夜間2.3μg/m3であった。石炭燃焼の指標としてAsに着目しAs/V比を調べると7月28日~30日に0.61~0.94、8月3日夜間は2.5に上昇した。後方流跡線は大陸の気塊輸送を示し、PM1の昼夜別採取の有効性が示された。 北東アジアの実態を解明するため、夏季と冬季に中国上海市と韓国済州島でPM1採取を行った。2019年度冬季以降は新型コロナウイルスの影響を受け、現地の試料採取に支障が出たため研究期間を延長したが、中国・韓国の状況に改善は見られなかった。唯一経年的試料が得られた済州島の夏季はPM1中のAs/V比は0.30(2017年)、0.17(2018年)、0.06(2019年)と減少が見られ、中国の大気汚染改善を反映していると考えられた。
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