研究実績の概要 |
東電福島第一原発事故由来Pu同位体の環境動態解析、環境除染・廃炉作業に伴い発生する廃棄物の汚染状況の把握及び被ばく線量の評価には、重要同位体(Pu-238,Pu-239,Pu-240, Pu-241)、特に線量寄与が大きいPu-238とPu-241の測定が必要である。本研究はトリプル四重極ICP-MS/MSを用いて、イオン-分子反応よりU-238とPu-238を分別し、これまで測定が困難であったPu同位体の同時測定を可能とする先端質量分析法の開発を目的として研究を進めている。 研究では、昨年度確立した少量海水迅速分析法を用いて、福島事故の初期段階(事故後2ヶ月以内)に原発から33-163km離れた海水中のPu同位体を測定した。その結果、239+240Pu濃度と240Pu/239Pu原子比の両方がバックグラウンド範囲内にあった。事故の初期段階においても、事故により海洋環境へ放出されたPu同位体について、その影響を明確に確認することはできなかった。 本年度研究では、融点が低いNH4HF2を用いて、環境試料と廃炉関連コンクリート試料中のPu同位体の迅速分析のため、新規低温溶融法を開発した。従来法より低い温度(250度)で、また15分の短時間で試料中のPuを溶出可能にした。特に、NH4HF2溶融法の全工程でHFを使用していないため、HNO3-HF分解よりも安全で環境に優しい方法である ICP-MS/MSでのPu同位体測定について、CO2反応ガスを用いて、イオン-分子反応よりU-238とPu-238を分別する実験条件を詳細的に検討した。オンマスモードで超微量(fgレベル)Pu-238測定法を確立した。これらの結果から、本研究で得られたICP-MS/MSのプルトニウム同位体測定法はPu同位体(Pu-238, Pu-239, Pu-240, Pu-241)の同時測定可能であることを確認できた。
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